3345手間
ワシが騎士たちと話している間に近侍の子らの手によって鹿肉はあっという間に解体され、あっという間にあとは焼くだけ煮るだけという段になり、彼女たちが解体している間に騎士たちが用意していた、竈で串に刺して焼いたり鍋の中で煮て振舞われた。
串などを用意している辺り、彼らも彼らで狩りをしていたようだが、せいぜいが兎を仕留めれやくらいであまり成果は芳しくなかったようで、鹿肉を振舞われたことにより、彼らの士気はこれまでになく向上した。
「こういう所は貴族も平民も変わらぬのぉ」
「そ、そうですね」
狩りをするということもあってか、なぜか近侍の子らに気に入られていた、この場で唯一の平民である狩人が、ワシの呟きを聞き戸惑いつつも同意する。
何にせよ、食とは貴賤問わず大事なことなのだ、食が必要ないワシとて、不味い食事が続けば機嫌も悪くなる。
「ふぅむ、残りは干し肉でもと思うておったが、この調子では一かけらも残りそうにはないのぉ」
「申し訳ございません」
「よい、元より食うために狩ったのじゃ」
狩人が粗相をしないようにという名目で、ワシの傍に残っていた騎士の一人が、ワシの呟きに身を縮こまらせて謝罪する。
とはいえ言った通り、元より皆が食うために狩ってきたのだ、なれば平らげられる方が狩った者たちも気分が良いというもの。
どうせ明日もワシが狩りに出るのだ、ここで肉が尽きたところで問題ない。
「しかし、ホブゴブリンを放っておいてよろしいのですか? 幻術の中に逃げられては私どもでは手も足も出ませんが」
「よいよい、勢子が動いておるのに、暴れる者はおらんじゃろうて」
「それは、確かにその通りでございました」
今は騎士たちがホブゴブリンを狩って奴らを追い詰めている、だというのに追い込む地点で暴れる者がどこにいるのか。
追い込み疲れ果て一所に集まったところを一網打尽にする、それこそまさに理想だろう。
「なんにせよワシが狩りに出るのじゃ、成果は当然じゃと思って待っておると良い」
「はっ」
獣であろうと魔物であろうと、ワシが狩りに出るのであれば、何の成果も得られずに帰るなどあり得ない。
ワシこそが勝利であり、武運そのものであるとかんらかんらと笑い、近侍の子らが恭しく持ってきた串焼き肉へと豪快にかぶりつくのだった……




