表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3368/3461

3344手間

 夕方になりホブゴブリン狩りから戻ってきた騎士たちに交じって、なにかを二頭抱えた近侍の子らが帰ってきた。


「このような時間になり、更に鹿を二頭しか仕留めれず、申し訳ございません」


「よい、狩りそのものに時間がかかったわけではなかろう?」


「はい、既に処理は済ませております」


 近侍の子らの言う通り、鹿は既に首を落とされ皮は剥がれ、内臓も取り除かれており、後は切り分けて焼くだけといったような状態だ。

 これだけの処理をしたのだ、狩りそのものは陽が天頂にたどり着くより前に終わっていたのだろう。

 本当ならしばらく置いた方が上手いのだが、すぐに食うのであれば肉が堅くなるより前に焼いた方がいいだろうと、近侍の子らはすぐに鹿肉を捌きはじめる。


「肉はすぐに食べないと、硬くまずくなるのではないですか?」


「確かにそうなのじゃが、またしばらくすると柔らかくなるからの。さらにそこから置くと旨くなるのじゃが、しっかりとした氷室やらで置かんといけんからのぉ」


「なるほど…… 我が家には大きな氷室が無かったので、それは無理だったのでしょう」

 

 狩りを趣味としてる騎士が、ワシの呟きを聞いたのかそんな風に聞いてきた。

 たしかに半日くらいで肉は硬くなるが、さらにそこから一日二日置くとまた柔らかくなる。

 そしてそこからしっかり冷やした氷室で数日置くと肉の旨さが引き立つのだ。


「とはいえ色が悪くなった表面やらを削らねばならぬからの、狩り生業としておる物からすれば量が減るのじゃ、やりたがる者は少ないじゃろうて」


「それで、彼からもそんなやり方を聞かなかったのですね」


 ちらりと狩人の方を見るが、一介の狩人が鹿肉を吊るせるほど大きな氷室を持っている訳もなく、大体がその日の内に肉屋に卸しに行くだろう。

 ならば肉を置いて旨くする方法など知るわけもなく、仮に置くとしても塩やらを使った干し肉を作った方が手軽で確実だ。


「鹿の干し肉ですか、硬くて私は苦手なのですよね」


「ふむ?」


 どれだけ質の悪い干し肉を食べていたのだろうか。

 保存性を最優先にして、鹿肉ではないが石の如く硬くなるまで干した物もあるにはあるが、ワシに喰えない物などないので、あれはあれで味が濃厚で美味かった。

 

「石のように固く……? どうやってそれを食べるのですか?」


「ナイフなどで削って、スープに入れて飲むらしいのじゃ。今思えば、ドワーフが石を食うのも似たような感じなのかのぉ」


 石のように固くはあるが正しく食べ物であったのでワシも食えたが、今にして思い返せば、あれはドワーフの食生活を体験していたようなものだったのかと、ワシは感慨深くなるのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ