3339手間
近侍の子らは素早くワシから金属片が入った受け取り背負うが、騎士たちが自分がそれを背負うと言うが、近侍の子らはどうしたものかとお互いに顔を見合わせる。
「これは神子様より、直接お預かりした物ですから」
「ですが女性に重い物を持たせて、我々がなにも持たないというのも」
「しかし、そもそもコレ、持てますか?」
困ったようにワシを見る近侍の子らに、許可を出すよう頷けば、そもそも重いけど持てるかと騎士たちに問えば、彼らはちょっとムッとしたような表情をしながらも、持てますともと胸を叩く。
「では、どうぞ」
近侍の子らも金属片が入った袋を持って重そうにしているが、それでも女性が持てるぐらいだからと色んな意味で軽く見ていたのだろうが、騎士の一人が袋を受け取った瞬間、まるで袋が急に重くなったかのように騎士は腰を落とし目を丸くする。
「おぬしらより華奢なように見えて、彼女らも間違いなく獣人じゃぞ? おぬしらより膂力はあるに決まっておるではないか」
「こ、これは一体何が入っているのですか?」
「中で拾った金属片じゃぞ」
何とか二人がかりで袋を持った騎士たちの疑問に、だから重いのは当たり前だとワシは肩をすくめる。
騎士ゆえにあまり獣人とは接点がないから致し方ないのであろうが、来る途中の騎乗した姿などで、彼女たちの身体能力が優れてると分からなかったのだろうか。
しかも、彼女たちは近侍という、神国でいう所の近衛であり、そんな精鋭中の精鋭が、しかも身体能力がヒューマンをしのぐ獣人の中でも上澄みの彼女たちが、なぜ自分たちよりも身体能力で劣っているなどと思えたのだろうか。
まぁ、彼らも身体能力云々がどうという訳ではなく、単純に彼らのポリシーとして女性に重い物を持たせるにはと思っただけなのだろうが。
とはいえそれならば、まず真っ先にワシに声をかけるべきなのではないだろうか。
ま、ワシが持っているのは自分が入りそうな大きさの、見るからに重そうな金属の塊が二つ、自分たちでは力不足だと見るからに悟ったからではあるだろう。
「神子様、その二つもドワーフたちへの?」
「いや、一つは神都の魔導具の研究者らにの」
「ということは、それは何らかの魔導具だと」
「んむ。見た限り、中にある物を冷やすための魔導具らしいのぉ」
「氷室…… にしては小さすぎますし、形も変ですね」
「であろう? 研究者たちなれば、何ぞ分かるやもしれんしの」
近侍の子らもやはりワシと似たような感想を呟き、どんな使い方があるのだろうかと、当たり前だが彼女たちもコレを持とうなどと欠片も感じさせぬ様子で考え込むのだった……




