3333手間
ホブゴブリンの声がする廊下へと進めば、その左右にはやはり似たような小部屋があり、一部大部屋らしき場所もあったのだが、崩落していて大きさ自体は小部屋と大して変わりはない状態だった。
そんな部屋の中ではホブゴブリンどもが寝たりして過ごしていたのだが、一部の比較的綺麗な部屋では、奴らが増える為に必要なことをやっていた。
幸い人が攫われてきてなどと言うこともなく、ホブゴブリンだけだったので、見ていて面白いものでもなく目が腐りそうだったので、特に念入りに部屋ごと焼き尽くしておいた。
「何ともおぞましいものを見せられたものじゃ」
気分の悪さで言えば、ゴブリンやオークの巣で保護したり弔った女性たちを見た時の方が圧倒的ではあるが、それとは別種のおぞましさと言えばよいか。
何にせよ、もしこのまま増え続ければ、そのおぞましい光景を見ることになるやもしれないので、ここで止めれたことは幸いであろう。
そんな嫌な気分になりながらも、更に部屋を回って同じように燃やしていけば、彼らもある程度は区分分けしていることが分かる。
今までワシが回っていた所は下っ端のホブゴブリンが居る区画だったようで、その次はやや恰好が豪華になったホブゴブリンの区画を挟んで、食料などが雑に放り込まれた区画、そしてその奥に懸念した通りの魔法を使うホブゴブリンの居る区画が続いていた。
とはいえワシからすれば、だからどうしたと一律焼き尽くしていっただけなのだが。
「ふむ、これは……」
そしてその奥の区画は武器などが雑に置かれた部屋が続く区画だったのだが、この区画に置かれていた物は、外で見かけたホブゴブリンどもが持っていた石斧や骨などを利用した杖などではなく、何らかの金属片を使って作られたツルハシのような物だった。
「なるほど、これで洞窟を掘っておったのじゃろうな。ふぅむ、ホブゴブリンどもが鍛冶仕事をしておる訳ではないようじゃな」
幸いこの金属片はどこからか拾ってきた物を利用しているのだろう、形や大きさもバラバラな金属片を骨に括り付けただけの単純な物だった。
何にせよ金属片を利用する知恵があるのは厄介だが、それを自ら生み出せるほどの知恵も技術もないと分かったのは僥倖だろう。
なにせ利用できるだけなのと、生み出せるのでは脅威度というものは恐ろしいほどに変わってくる。
どんな道具であろうと使えば摩耗する、要は使えなくなるわけだが、そこに補充できるかできないかと言えば、どっちが危ないかなど言うまでもない。
「ふぅむ、これは何ぞの水槽か何かを引っぺがしてきたのかのぉ」
そもそもこの遺跡は何のためのモノだったのか、柄が取り付けられていない金属片が纏められている部屋を見つけ、何か無いかと見てみれば丸みを帯びた同じような金属片があり、軽くそろえてみれば、もし急に形が変わったりしなければ、長さこそ分からないものの円筒型になりそうだなということが分かる。
「ま、それが分かったところで何という話じゃが」
明らかにこの遺跡は劣化しており稼働はしていない、前に見た場所のようにわざわざ破壊する必要もないかと、とりあえず当初の予定通り、ホブゴブリンの気配を辿り、ようやく自分たちに差し迫る危機に気付いたのか、積極的にこちらに襲い掛かってくるようになったホブゴブリンどもを次々と燃やしながら先へと進むのだった……




