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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3354/3466

3330手間

 しばし足を進めても近侍の子らと騎士たちが話し合う声は普通に聞こえるので、やはり何か魔法的な力で認識をゆがめられているのだろう。

 彼女たちがこちらに視線を向けようとしたとき、不自然に目をそらしていたところから、無意識のうちにここが意識に入らないようにしているか、認識を飛ばされているか、どちらにせよなかなかに高度なことをやっているようだ。


「しかし、ホブゴブリンどもは影響を一切受けておらんようじゃ」


 ホブゴブリンの新しい足跡は迷いなく、この幻術の効果範囲に入ってきているので、どういう理屈にせよ奴らには効いていないことは間違いない。

 もし幻術の効果範囲に無理矢理他の者を引き入れたら、どういうことになるのか気になるところであるが、どんな効果を及ぼすか分からないので、騎士たちましてや近侍の子らを無理矢理入れることはしない。


「しかし、何のためにこの幻術を掛けておるんじゃろうなぁ」


 単純に考えればホブゴブリンの巣が、他の獣や魔物に見つからないようにするためであろうが、それにしては効果範囲が広すぎるように思える。

 例えば霧のようにただ単に目隠しをするような効果であれば、ふいに見つかったりしない為にも広範囲に効果が及んでいるのは分かる。

 しかし、この幻術は完全に認識をずらしているし、局所的に使った方が効果的なように思える。

 

「まぁ、術を使っておる何かを見れば分かるかの」


 とはいえそれは難しいだろう、何せワシには幻術が文字通り分からないのだ、目を閉じている人に道案内を頼むようなもので、どこが発生源かの目途すら立っていない。

 そして同様の理由で幻術を使うことも出来ない、正確には出来るのだが、目を閉じたまま画材を用意して絵を描くのと同じで、そもそも絵を描き始めることが出来るか分からないし、よしんばかけたとしてもちゃんと絵が描けるかどうかすら怪しい。

 絵ならばそれも味になるやもしれないが、他者に影響を与える幻術である以上、ワシの能力で発動した場合、どれほど重篤な効果を及ぼすか分からず、何が起こっているか分からないので加減をするのも難しい。


「やはりワシには要らぬのぉ」


 幻術の効果範囲を上手く隠す力はいろいろと便利そうではあるが、効果が強すぎた場合の悪影響などが分からぬ以上、無暗に振るってはならぬ力であろうし、万が一良からぬ輩がこの力を魔導具などで再現した場合はどうなるかなど言うまでもない。


「さてそろそろ、……あぁ、アレじゃろうな」


 ホブゴブリンの痕跡が増え、この辺りを頻繁にそれなりの数が行き来しているのならば巣は近いだろう、そう思いちょっと見渡せば明らかに怪しい洞窟と、そこに隠すことなく入ってゆくホブゴブリンの痕跡があった。


「ふむ、今までのホブゴブリンどもと違い、堂々とでかい洞窟を使っておるとは。やはりこの幻術の効果が分かっておるのじゃろうな」


 ホブゴブリン、というよりもゴブリンの習性であるが、彼らも完全に馬鹿ではないので、自分の巣の周辺には見張りをたてていたりする。

 無論真面目にやっているかと言えばやっていない場合も多いのだが、ここにはそんな様子すらない。


「細い出入り口の洞窟を使っておったのは、幻術がない故の苦肉の策か、それは考えれても見張りを立てるという考えには至らなかったのかのぉ」


 そんなことを考えつつも結局はどちらでもいいかと肩をすくめ、確実にホブゴブリンが待ち受けているであろう洞窟の中へと足を進めるのだった……

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