3326手間
何度か野営を繰り返しながら先へと進めば、特に何事もなく騎士たちが共同で設営した野営地へと到着した。
「ここを野営地として大丈夫なのかえ」
「はい、ホブゴブリンの行動範囲から外れている場所に設営しましたので」
「ふむ」
近侍の子らが馬番に馬を預けに行っている間に、野営地で待機していた騎士へと近状を聞くが、やはり報告書にあった内容以上のモノは聞くことが出来なかった。
素人でも分かるくらいの痕跡が残っているのに、肝心のホブゴブリンの巣が見つからない、そんな状態が何日も続き、騎士たちも随分と苛立っている事くらいが新たに知った情報だろう。
「では早速行くとしようかの、最も近い痕跡はどこじゃ?」
「それでしたらご案内します」
近侍の子らが戻ってきたのを確認すると、早速狩人と騎士たちを案内に、ホブゴブリンの痕跡がある場所へと向かう。
「ふむ、比較的新しいようじゃな」
「街に戻る前はなかったので、最近ここを通ったのでしょう」
「逃がしてはおらんのじゃろうな」
「流石に全てとはいきませんが、ある程度の間引きは」
新しい痕跡があるということは、当然そこを通ったホブゴブリンが居るということで、また別の場所に住処を作られていないかと聞けば、ホブゴブリンが頻繁に通っている場所は潰して、他の場所はたまにというくらいで広がるのを防いでいるという。
まぁ森の中で完璧に包囲をしようとすれば、人も時間も足りないので、ここまでやってるだけ十分過ぎるほどだろう。
「さて、こやつらはこっちから来ておるようじゃな」
「なぜそちらに?」
「この足跡はさほど沈んではおらぬじゃろう、ならば獲物などの重い物を持っておらんと言うことじゃ。歩調も乱れておらぬし、周囲をさほど警戒しておらぬということは、恐らく餌やらを取りに行く途中であろう、なればこの足跡が来た先に巣があるはずじゃ」
ホブゴブリンは巡回する際に、複数匹で纏まって見まわる習性があるということが、騎士たちの報告で分かっている。
であれば単独の足跡のこれはエサや水を確保するために出た個体であろう。
ならば真っすぐ巣から来ているだろうと、流石と感心している狩人たちを連れて、足跡の道案内に沿って巣へと向かうのだった……




