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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3349/3470

3325手間

 騎士たちや狩人の休息のために二日ほど間を開けて、街中から郊外にかけては馬車で移動し、予定していた地点からワシも馬に乗り換えて件の場所へと向かう。

 今回は近侍の子らも一緒なので、馬車を降りてもかなりの大所帯であり、そうなると馬を飛ばすことも出来ないので道中で野営することになったのだが、二日の静養期間を設けたとはいえ、やはり連日の狩りで疲弊しているのか、騎士たちと狩人は随分と疲労困憊と言った様子だ。

 逆にワシは当然として近侍の子らも元気なもので、馬から降りてすぐに手早く野営の準備を進めてゆく。

 とはいえ荷馬車を同道させていないので本格的な野営ではなく、ワシ用の簡易的な天幕だけなのでさしたる手間もなく、後は馬の世話やら焚き火の準備程度の話だ。

 さらに馬や世話や焚き火の準備で大変な、水くみや火おこしはワシによって一瞬で出来るので、これまた直ぐに終わる。

 もちろん近侍の子らだけでなく、騎士たちの馬や焚き火にも水と火を分けているので、届けに行った子曰く随分と感謝されたようだ。


「まぁこんな距離じゃ、十分聞こえておったが」


「水くみはそれだけで大仕事ですし、火おこしも薪となるモノの状態次第ではこれまた大仕事ですから」


 餌そのものは文字通り道草を食わせておけばとりあえずは良いが、水だけはそうはいかない。

 川辺に野営地があればそのまま川で水を飲ませればよいが、離れていた場合はわざわざ運んでこなければならない。

 馬が水を飲む量は人の比ではないので、場合によっては川と野営地を何往復もして水を汲まねばならない。

 それが丸々無くなったのだから、彼らの普段を思えば相当な手間が省けたことだろう。


「それにしても、貴族のお姫様は馬もあんなに乗れるんですか?」


「いや、普通は殆ど乗れない。移動は馬車で済むし、そもそも街の外に出ることが稀だ」


「王太子妃殿下は、多芸多才な方だとお聞きしているからな、御爺様が壮健であれば一も二もなく忠誠を誓っていただろうな」


「確かお父上が御当主にお仕えされてるのも、先代の御当主が狩りがお得意だったからだと」


 向うで騎士たちと狩人が話しているが、一応ワシらに気を使ってか声を抑えて話しているが、ワシらからすれば大声とまではいかずとも近くで話されているのとさして変わらない。


「主の狩りの手腕で忠誠を誓うとは、何とも親近感を覚える話ですね」


「それを考えると彼の祖父は、全く以って勿体ない事をしましたね」


「であれば、あの者たちがホブゴブリン討伐で最も数を稼いだのも納得じゃな」


 相手の腕前を判断するには、当然自分もそれなりの腕前を持っていなければならない。

 そして当然、自分の子や孫には同じような技術や信条を教え込んでいることだろう。

 趣味で狩りをする騎士がその伝手で狩人を助っ人に入れたとしか聞いていないので、その騎士の腕前そのものは嗜み程度であろうと思っていたが、もしかしたら狩人としてもなかなかの腕前を誇っているのかもしれない。


「そんな者たちを抱えながら、今まで見つからないというのは、何とも奇妙な話でございますね」


「致し方あるまい、彼らには目と耳しか頼るものはないのじゃ」


 目と耳を森の中で誤魔化す方法はいくらでもある、しかし鼻を誤魔化すにはある程度の準備や場所が必要になる。

 であれば鼻を頼りに獲物を探せる獣人にならば簡単に見つけれるだろうと、明日も早く動くためにさっさと休むように命じてワシは天幕の中で横になるのだった……

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