3322手間
討伐数が減っていく報告の中で、一つ気になる報告が特別に飛び込んできた。
「何やらホブゴブリンが行き来している痕跡はあるが、どこに戻っているかが分からぬと?」
「はい、件の狩人を入れている班からの報告なのですが、足跡などもはっきり残っているのに、同じ地点でそこから先が分からなくなると」
「ふむ? 上手く痕跡を消されておるのかの」
「それは私にはわかりませんが、一度ホブゴブリンを尾行もしたそうですが、同じような所で見失ったと」
「なるほどのぉ」
「セルカはどう思う?」
「まぁその報告だけを聞くなれば、十中八九そこに巣の入り口か抜け道があるのじゃろうが」
狩人がそれ以上の痕跡を追跡することも、入り口を発見することも出来なかったのであれば、なかなか巧妙な位置にあるのだろうか。
獣人であれば匂いでも追跡できるのであろうが、残念ながら件の狩人はヒューマンなので、流石にその追跡方法は難しい。
「では、そこを重点的に探させようかの」
「それなら、ここらで報奨の為の集計は止めておくかな」
「別に続けても良いとは思うがの」
「そろそろ一部を、もとの配置に戻したくてね」
まぁ、長く留めすぎても居るとは思うので、クリスの言う通りにそろそろ一部は通常業務に戻らせても良いだろう。
であれば報奨を渡しても良いだろう、もしホブゴブリンの件がひと段落したところで報奨となれば、自分たちは通常業務に戻ったから討伐数足りなくて云々と不満が出てくるやもしれない。
「そうじゃのぉ、では一度働きに応じての報奨を与え、上位の者たちに件の場所付近を捜索させようではないかえ」
「上位の者たちをかい? それは下位だった者たちから不満が出るんじゃ?」
「やる気かどうかはともかく、数値としてホブゴブリンを見つけれなかった者たちを、隠れておるモノを探させたとて役に立たんじゃろう」
「あぁ、まぁ確かにその通りだね」
討伐数が上位というのは、つまるところそのままホブゴブリンを多く見つけたということだ。
逆に下位というのは、ホブゴブリンを見つけれなかったということ、狩人が見つけれなかった奴らを、今まで見つけれなかった者たちが見つけられるとは思えない。
そうワシが言えばクリスは身も蓋もないがその通りだと、苦笑いしながらワシの言う通りに報奨の準備やらの指示を出すのだった……




