3317手間
人や物などに限らず、探し物というのは何を探しているかある程度絞り込んでいないと、存外目に入っていても見落としたりするものだ。
それを証明するように、ホブゴブリンの容姿と好みそうな住処の特徴を伝えたら、次々という訳でもないが、騎士たちからホブゴブリンの巣を見つけたという報告が入ってきた。
「ふむ、一部は討伐などしたようじゃな」
「討伐というよりも、燻しただけのようだけれどもね」
報告を見る限りホブゴブリンはたまたまではなく、好んで狭い隙間を入り口としているようなので、ワシが入れぬ隙間に騎士たちが入れるわけもなく、入り口で煙を大量に発生する物を使ってホブゴブリンの巣を燻して、ついでに他に入り口がないかも調べたという。
「それにしてもよくそんな煙が大量に出るような物を、都合よく手に入れれたのぉ」
「狼煙に使う薬を使ったんだろう。アレは用量を間違えると、びっくりするぐらい煙が出るからね」
「なるほどのぉ。確かに狼煙ならば燻すのも容易いかえ」
狼煙は雨の日でも使えるように、かなり濃い煙を出す為の薬があるというのは前に聞いたことがある。
それを屋内で使われたのならば、ホブゴブリンたちは実に憐れな事になっただろう。
「それにしても、随分と巣が近くに固まっていたな」
「そうじゃのぉ、ゴブリンでも、もっと間隔を取って巣を作るからのぉ」
巣と巣の間隔が短いということは、それ相応に各々の縄張りも小さいということ。
となると食料を手に入れるにしても、広い範囲で収集できないので縄張り同様に量が少なくなる。
多少知恵は回るようだがホブゴブリン同士が食料を融通するわけもなく、そもそもそんな事をするくらいならば巣を分けずに一つの巣になっていればいい。
「巣分けを頻繁に行っておるのか、それとも存外あの体格で食べる量が少ないのか、ふむ、近くに居るのならばまとめて駆除できるから、こちらとしては都合がよいがの」
「戦った騎士の報告によれば、魔法が無くともゴブリンよりも強いらしいから、一網打尽とはいかないだろうけれどね」
「ふむ、相手の強さに関しては、ワシより騎士たちの感性の方が正確じゃろうからの。どうやって駆除するかは一任させよう」
「予算に関しては増やしておこう、強いのならばその分、消耗なども増えるだろうしね」
一応は未知の魔物なのだから、それに対処する者たちの為にお膳立てするのがワシらの仕事であろう。
文官たちも予算を増やすと聞いて一瞬渋い顔をするが、未知の魔物の対処となれば流石に口を挟むようなことはせずに、粛々と手続きを進める為の書類を用意するのだった……




