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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3304手間

 何者かに見張られている、その事実は兵士や冒険者たちの間で迅速に共有され、冒険者たちはちらちらと周囲を警戒しながらもいつも通りにしているが、兵士の中でも堪え性のない者たちが、ざわざわとあからさまに外を見たりして、警戒しているということを露わにしてしまっている。

 あからさまに慮外者を見つけたという反応なのに、件の気配は動く気配はなく、やはり変わらずこちらを探っているようだ。


「ふぅむ? ある程度は気配を消すのは上手いが、頭は回らぬのかのぉ」


「それはどういうことでしょうか?」


「向こうもこちらが見つけたことは分かって、いや、分かっておらんのかの。もし上から見張るように厳命されておったとしても、流石に見つかったら逃げるじゃろうしな」


「申し訳ございません、殿下。まだ不審者は見つけた者はおらず、勘の良い者が気配を感じているだけでございます」


「なるほどのぉ、向こうもそれが分かっておるということかえ」


 兵士たちは狩人ではないので、森の中で気配を消している者を見つけるが不得手なのは致し方ない。

 ならば冒険者たちはどうか、先程報告してきた者の話では、こちらを探っている者が居るのは分かったが、場所まで特定できているかは分からない。

 ワシの立場的に報告させるのが筋であろうが、向こうがその動きを察知しないとも限らないので、ワシは気配を怪しくない程度に薄くして冒険者たちが固まっている一角に向かう。

 彼らは人数の割に小さ目な天幕の傍で焚き火をし、それを囲むように寝袋や背嚢などを椅子代わりにじっと焚き火を眺めているように見える。

 まだまだ空が白むには早く、焚き火の光でぼんやりと浮かび上がっている冒険者たちの間に、魔晶石で小さな椅子を創り出し座ると、ぎょっと肩を跳ねさせる者と、ほっと胸をなでおろす者に分かれた。


「ふむ、冒険者たちもなかなかに優秀じゃな」


「狼のような気配の消し方は止めてもらえると、心の臓が助かります」


「狼の気配を探れるとは、ますます結構。なればおぬしも気付いておろう?」


「はい。ですが私も言われて気付いたので、自分たちだけでは間違いなく、無防備な横腹にかみつかれていたでしょう」


「そこはこれからの精進次第じゃろう。で、向こうの場所は分かっておるかえ」


「大体の方角となんとなくの距離であれば」


「ほうほう、それだけ気付ければ重畳々々」


 相手は一人なのだ、大体の距離と方角さえ分かっていれば、それはもう見つけたと言っても良いだろう。

 

「他にも来るような気配がなければ、一気に距離を詰めれば」


「さてのぉ、ワシならばともかく、この暗さの森の中を追いかけるのは至難であろうて」


 今ならば確保は余裕だというが、真っ暗な森の中を確保するのは無理だろう。

 何せ向こうはこの暗さなの中を灯りもなくやってきたのだ、ならばこの暗さに十分以上に慣れており、この暗さの中でも問題なく森の中を行けると証明しているのだ。

 であれば、向こうの動きが見えるまで待ってみようと、冒険者たちに距離や方角など、ある程度把握できている者を固めて待機しておくように命じ、ワシは一度彼らから離れるのだった……

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