3294手間
ワシが昔を思い出し懐かしい気持ちに浸っているうちに、冒険者たちは兵士に聞いて野盗どもの武器庫から各種武器を運び出し、元々かそれとも運び出すのに便利だったからか、無造作に木箱の中に入ったままの剣や槍を、ぐるりと冒険者たちが囲う。
武器を囲んでいる冒険者たちの表情は、嬉しそうな者や勝ち誇った顔を見せている者と、苦々しい顔や悔しそうな顔をしているものと二つに分かれていた。
「この中に武器が壊れた者はいるか?」
「うちのとこにはいない」
「こっちもだ」
今回冒険者たちは複数のグループが一つとなってきており、一つのグループの長ので冒険者たち全体を取りまとめる者が、今回の戦闘で武器が壊れた者は居るかと問いかけ、それに対し他のグループの長たちが居なかったと首を横に振る。
「では何人やった」
「こっちは二人」
「一人だ」
「私のところは三人やったが……」
今回の戦果を報告し合っていた冒険者たちであったが、その途中でちらりとワシの方に向き直り、何かうかがうような顔になっていたので、ワシはひらひらと手を振ってワシのことは気にするなと示す。
騎士でもなく兵士でもなく、一番戦果を挙げたのはワシだからとでも思ったのだろうが、ワシからすればあんな質の悪い武器を貰ったところで扱いに困る。
そうしてなにやらいくつか話し合うと、冒険者たちの中で一番に戦果を挙げたであろう者が無造作に武器を掴み後ろに下がり、そこで掴んだ武器を確かめている。
「お、当たりかこいつは結構いい剣だ」
「いいなぁ、俺のを見てくれよ」
「あー、欠けちまってるなぁ」
そこにまた別の武器を掴んだ冒険者がやってきて、自分が掴んだ武器を鞘から抜いて確認しては肩を落としている。
どうやら武器の良し悪しを確認してから自分の物にする訳ではなく、まるでクジのように適当に決めているようだ。
なるほどあのやり方ならば、後であろうが先であろうが文句は出にくいだろう。
「いいじゃねぇか、お前はもう一回だろ?」
「そうそう、こっちは一本だけで先が折れてる奴を掴んじまった」
なるほど、戦果を挙げた者は複数回引けて、駄目だったものは回数が減ると。
いやはや何とも面白いやり方で戦利品を分けるものだと、一喜一憂している冒険者たちを見てなるほどと感心するのだった……




