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声を遠くへと投げるように腕を振り声を荒らげる野盗の頭は、歯をむき出しにギッとワシを睨みつける。
「見せしめのためだけに皆殺しにするのか」
「ふむ? 確かに見せしめと言うならば、誰か見ておらんと意味がないのぉ」
「そうだろう? 誰かが生きて語らなくちゃ恐怖も伝わらねぇ」
「確かにその言にも一理あるのぉ」
「だろう?」
「か、頭?」
野盗の頭が声を荒らげるものだから、なんぞ罵詈雑言で以て吠えるのかと思っていたが、それは最初だけで段々と野盗と聞いて思い浮かべるような、下卑た顔になってきた。
とはいえその言葉は正論であり、誰かが見て語らねば見せしめの意味もない、何せ誰も知らないのならばなかったのと同じなのだから。
「だから俺たちがあんたの事を喧伝する、この辺りで絶対に悪さしないように絶対に伝える」
「ふむ?」
「一通り言いふらしたら自首すると約束するからよ、一先ず俺たちを見逃しちゃくれねぇか?」
「なるほど、司法取引をしたいという訳じゃな」
「そうだ、シホー取引したい」
「んむ、そうじゃな、そう提案してくるということは、おぬしは近隣の野盗どものアジトの場所を知っておるということじゃな?」
「あ、あぁ、逃げたり、河岸を変えてたら流石にわからねぇが」
「その場所を知っておるのは、おぬしだけかえ?」
「いや、他にも何人かいる」
「ほう? それは誰じゃ?」
「おい!」
頭の声掛けに何人かが集まってきたので、その顔を一通りじろりと見ると、ワシは無言で正門を吹き飛ばせば、それを見て頭たち野盗どもは顔を明るくさせ、門へと駆けていくのだった……




