3277手間
突然近くで燃え上がった仲間に周囲で見てた者は驚き固まるが、頭と呼ばれた男の一喝により、すぐに動き出しある者は池から水を汲み、ある者は上着を脱いでそれを炎に叩き付ける。
「小屋にそれ以上水はもういい! それより周りの小屋をぶっ壊して土でもかけて燃えないようにしろ!」
「頭! あいつの炎消えません!」
「確かに…… 水かけても叩いても揺れるだけだな」
チッと頭が派手に舌打ちするのと時を同じくし、炎に包まれていた男はその熱で苦悶の声をあげていたが、その声が弱々しくなると同時に炎も小さくなっていき、声がしなくなると共に炎も消え、周囲の仲間たちが彼に一斉に駆け寄る。
「も、燃えてない?」
「だが……」
「どうだ?」
「頭…… 死んでやす」
「どういうことだ? あんだけ派手に燃えてたのに、どこもかしこも焦げ跡一つすらねぇ」
それもそのはず、ワシが彼に点けたのはマナを燃やす炎、普通の炎ではないので熱を感じはするが、ワシが制御する限り燃え移ったりはしない。
そしてマナを薪に燃えるということは、体のマナが尽きれば炎も消える、それは同時に命の灯も消えることに他ならないが。
「そやつのマナだけを、要は命だけを燃やしたからの」
「何もんだ!」
ワシが屋根から降り彼らに声をかけると同時、野盗の頭の誰何する声といっしょに周囲の者たちから拳やらが飛んでくる。
「ふむ、なかなか良い反応じゃが」
繰り出された拳は空を切り、ワシは再びひらりと屋根の上に跳び上がる。
「火を点けたのはてめぇか」
「如何にも。あぁ、下手に動くでないぞ? この集落の者の位置は全員把握しておる。おぬしらも、ああはなりたくはなかろう?」
ワシが顎で先程まで炎に包まれていた男を示せば、降りてこいやら口汚く罵っていた男たちは、ひゅっと喉を鳴らし黙りこむが、ただ一人、野盗の頭だけは顔を火であぶったかのように真っ赤にさせ、ギリギリと派手は歯軋りの音を響かせるのだった……




