3271手間
偵察を行うにあたり、兵士や冒険者たちを集めて説明を行ったのだが、兵士たちはもとより冒険者たちもワシの見た目で侮らなかったのは意外だった。
ワシのことを知っている者が何か言ったのか、なんにせよ手間が減ったのは良いと兵士二十名、冒険者十五名が何台かの幌馬車に分かれて乗り、ワシは馬車へと近侍の子を連れて乗り込み出発する。
御者には偵察を行った冒険者が座っており、彼が馬車の運転兼案内を行う。
「王太子妃殿下、もう間もなく」
「うむ」
「この辺りに丁度よい空き地がありますので」
斥候の男がこれ以上進めば見つかる可能性があると言うので、後続に停車の合図を出して降車する。
道の脇にあるちょっとした広場のような場所に兵士と冒険者たちを集め、斥候が詳しい場所を兵士らの隊長などのリーダー格に詳しい場所を伝えて、ワシの合図で突入できるように待機させる。
「ここは見えぬのじゃな?」
「はい、ちょうど山の影になっておりますので」
「なればよい」
集団は大きくなればなるほど、見つかる危険性は上がってゆく。
なので存外、件の集落から近いここは大丈夫なのかと斥候に聞けば、彼はここはちょうど集落がある崖からは山が影になって見えることはないという。
とはいえ山肌を伝っていけばとも思うが、こちらを隠す山はかなりの急斜面であり岩がちで木々もないので、向こうが見つけようとすれば、こちらからも見えるだろう。
「ここからは森の中を」
「ふむ」
道は当然まだ続いているが、ここからは集落に建てられた櫓から見える可能性があると言うので、ワシらは森の中、道なき道を進むことになる。
斥候だけあって森を中を進むのも慣れたものか、殆ど音を立てずに進んでおり、足取りは道どりを行くのとさして変わらないが、しっかりと周囲を警戒しているのも分かる。
「王太子妃殿下、あれが集落でございます」
「なるほど、確かに怪しいのぉ」
しばらく森の中を進みある一点で立ち止まると、藪の影に移動しつつ斥候が一点を指差しあれが件の集落だと告げる。
そこにはしっかりと丸太で壁が築かれ、ギリギリ道からは見えないような高さでかつ壁の上から周囲を確認できるような櫓が組まれていた。
「以前見た時よりも、壁が強固になって中が見えなくはなっていますが」
「ふむ、つまりはまだこちらのことは露見しておらぬということでもあるな」
壁を完成させたということは、逃げる準備をしていないということでもあるだろう。
もちろんそう思い込ませて実はもぬけの殻という可能性も十分にあるが、まぁ中を確認すればいいだけだと、藪の影に斥候を待機させて彼が止めるよりも早く、森の中を集落に向けて風のようにスルスルと音を建てずに近づくのだった……




