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神国では、領主の許可を得ずに村などを新たに興すことは違法だ。
もちろん洪水などの災害で、居を移さざるを得なかった場合は多少猶予が与えられるが、それでもなぜ移したのかなどの理由を添えて、領主に申請しなければならないが。
とはいえ災害などで余裕がないであろうから、領主に申請するのは代理の者でも良いが。
「そのいずれもない。であればその村は違法であり、そこに住んでいる者は野盗である」
「で、そこの違法な村に野盗以外の住人はおるかえ?」
「私が確認した限りでは、怪しい者以外は居ませんでした。ただ家屋の中を確認は出来なかったので、そこに居た場合は」
「よい、それが分かっておるなれば良し」
住んでいる村が違法であるかどうか、そんなことは村長などの権力者でなければ分からない。
そもそも殆どの村人は、そんな法があること自体を知らない者が多いだろう。
つまり、自分が住んでいる村が違法であると知らずに住んでいる一般の者が居るのではないか、その懸念は偵察を行った傭兵の証言でほぼほぼなくなった。
まともな村であれば、日中に明らかに一般人らしき者が外に出ていないというのはおかしい。
もちろん、彼が見た時にたまたま家屋の中に居たという可能性もあるが、全ての一般人がたまたま籠っていたなどと言うことがあり得るだろうか。
「あの、私のような者が、このようなことを言うのも烏滸がましいですが、どうやって討伐するかとかは……」
「それに関しては問題ない」
「んむ、何の問題もないのじゃ。然る時には、おぬしら冒険者たちにも動いてもらおうかの」
ワシらが野盗の討伐に関しては全く話し合っていないことを疑問に思ったのか、冒険者が素直に聞いてきたが、ワシとクリスはそろって大丈夫だと何の気負いもなく答える。
何せワシが行くのだから、なれば討伐だけであれば何の障害もない。
「問題はいつからあるかじゃが」
「少なくとも土砂崩れより後じゃろうが」
「土砂崩れは、二巡り以上前でございますので」
「なれば違法じゃな」
何らかの災害で居を移した場合は、申請までに一巡りの猶予を設けている。
もちろんきっちり一巡りというわけではないので、まぁ二巡りくらいはざっくりと許しているが、それ以上であれば間違いなく違法であるから、容赦なくいってもいいだろうと、ワシとクリスはいつ向かうかを話し合うのだった……




