3266手間
天候にも恵まれ特にトラブルもなくガラスも嵌め終わり、屋敷のように巨大な温室がついに完成した。
とはいえ完成したのは側だけであり、あとは中に花壇などを作成し花や木を植えてようやく本当に温室が完成したと言えるのだろうが。
「内装につきましても引き続きまして私が、配置などに関しましては、王太子妃殿下付きの庭師の方々と協議し決めておりますのでご安心ください」
「ふむ、その点については心配しておらぬ。しかし、まだ完成はしておらぬということになるが、画家を呼んでよかったのかえ」
「外観は完成しておりますので、それを残すためにでございます。何せ本当に完成したと言えるのは中に入れた木々が成長してから、それは十数巡りも後になってしまいますので」
「その程度であれば、ふむ、まぁ絵に残すなればちと遅いかの」
早いものであれば数巡りもあれば大きくなるが、確かに一般的な木が、皆の知るような木々となるには十数巡りはかかるだろう。
ワシからすればさしたる時間ではないが、大抵の者たちからすれば長すぎるのも分かる。
「そういえば、持ってくる木はどの程度で大きくなるのじゃ?」
「取り寄せる木で一番早いものは、一巡りで人の身の丈ほど成長します」
「ほう、それならばすぐに賑やかになるのぉ」
取り寄せる木は当然すべて同じものではないので、成長速度もまちまちだが、近侍の子曰く一番早い物は数巡りで成木となるらしい。
一番遅い物は成木となるまでに数十巡りはかかるらしいが、まぁさしたる差でもない。
「じゃが、中に花も木もない温室を描くのは寂しくはないかえ?」
「それに関しましては、花は花畑のものを、木は想像で描く予定ですので」
「それは良いのかえ?」
「絵の主役は温室そのものでございますので」
いわゆる完成予想図とか、喧伝用の物と考えれば別に想像で描いても問題はないか。
どうせ飾ったりする用で、厳密に描かれていないからとわざわざ文句を言う者も居ないはずだ。
もし文句を言うのならば、その者たちはきっと肖像画などで見たままの姿で描いてもらっているに違いない。
そうでないならば文句を言う資格はないだろうと、一人勝手に納得しドワーフの時と同様に、今度は決して見つからないようにこっそりと、画家の背後からこっそりと描かれている途中の絵を覗くのだった……




