3259手間
蜜蜂を飼うと言っていいのかは疑問だが、花などを育てる為とはいえ養蜂をするにあたって期待するのがやはり蜂蜜だろう。
「この蜜蜂は、どの程度の蜂蜜が採れるのかの」
「そうですね、全く新しい場所なので量をというのは分かりませんが、一巡りの内に二度か三度ほどは蜂蜜が採れるかと」
「ほう、それは楽しみじゃのぉ」
流石に潤沢にとはいかないだろうが、三度も蜂蜜が採れるならこの屋敷だけで使う分には、十分な量が採れそうな気がする。
「しかし、蜂の巣の中にある蜂蜜を、どうやって集めておるのじゃ? 小さい巣の穴から一つ一つ掬うのは手間じゃろう」
「それでしたら、花粉や幼虫の部分を避けて、蜜が入ってるところだけ切り出して、切り出した巣を潰して濾すんです」
「巣を壊すということかえ? それは大丈夫なのかえ」
「蜂蜜は蜜蜂たちのエサですから、全部ではありませんから大丈夫です。巣を壊しても、しばらくすれば元通りになりますので」
「ひっくり返したりして採っておると思っておったが、随分と乱暴というか、豪快な採り方をするのじゃのぉ……」
「蜂蜜を濾した後の巣は、溶かして蜜蝋にしますのでどうせ潰すのですから、そうした方が早く蜂蜜が採れますから」
「なるほどのぉ。じゃが、溶かすというても火は使えぬのじゃろう? どうやって溶かしておるのじゃ?」
「それは昔からある、陽の光で蜂の巣を溶かす台を使っているのです」
「ほほう、そんな物があるのじゃな」
「はい。大昔、ヒューマンたちと取引をしていた時に作らせた物だそうで、今も修理をしつつなんとか」
丁寧に修繕を重ねて使っていたが、やはり肝要な部分が自分たちでは修理はおろか作ることさえできない、だからいつかは使えなくなるところだったが、ドワーフたちのおかげで新品同然どころかもっと良くなったらしく、最近は随分と蜜蝋が作りやすくなっていると、ダークエルフたちっは喜んでいるとそんな話を聞きながら、なら新しく蜂蜜を取る機械をこちらも作らせるかと温室の建造を終えた後にでも頼むかとそろばんをはじくのだった……




