3256手間
最新技術と大量の金属ネジにより、数日と経たずに栽培用の温室が二棟建ち、ダークエルフたちが持ってきた花の種や苗、そして養蜂箱が中に設置された。
その養蜂箱であるが、当然新しく用意した物なので蜂などおらずどうするのかと思っていると、ダークエルフたちが花の種や苗を入れていた箱とはまた別の少し大きめの箱を持ってきた。
「それはなんじゃ?」
「この中に蜂の巣が入っているのです」
「ほう、蜂の巣とな」
「正確には木の枠に巣を作らせた物ですが」
そう説明する間にも、実に手早い動きで蜂や蜂の子が入った巣枠を新しい養蜂箱に入れると、続いて彼女たちは何もない巣枠を養蜂箱へと入れていく」
「これでしばらく待てば、新しい木枠にも巣を作ってくれます」
「ほほう、こうやって新しい養蜂箱を作るのじゃな。それにしても蜂と聞くともっと暴れると思っておったのじゃが、随分おとなしかったの」
「もちろん、何もせずにこんな事をすれば大暴れして刺してきますが、煙で酔わして大人しくしていますので」
「蜂とは煙で酔うのじゃな」
「えぇ、特定の木を燃やした煙を当てると酔っ払ったみたいになって大人しくなるんです。ただ、やり過ぎるとそのまま死んでしまうので加減がなかなか難しいですが」
場合によってはそのまま燻して殺してしまうことも必要らしいが、基本的に木を燃やさねばならない以上、木の上に住んでいる彼女たちからすれば緊急手段のようだが。
「普段は新しい養蜂箱を近くに置いておけば、新しい女王バチが生まれた時に勝手に移動してくれるんですけれども、今回は距離がありましたから」
「ふむ、あまり居を移さぬというのに、よくそんな方法を知っておったな」
「私も話に聞いた程度ですが、たまに蜂の巣がダメになって遠くに移動させないといけないことがあるとか」
「なるほどのぉ」
「とりあえず、これで養蜂は大丈夫です」
「んむ、御苦労じゃったな」
そうワシが言うと、ダークエルフたちは新しい場所だと同じ花でもまた微妙にハチミツの味が変わるから、楽しみですから苦ではないですと、実にいい笑顔で首を横に振るのだった……




