3254手間
取り寄せる草木の選定を終え、温室の設計にも良しを出せば、次はダークエルフたちと再び花の選定を行う。
こちらにも木をいくつかとも思ったが、彼女たちの居る森の木々はどれも背がかなり高いので、温室には入れられないので当初の予定通りに花だけにする。
「飾るに良い花ですか」
「んむ」
「そうですねぇ…… 他にも花とかを近くに植えるんですよね?」
「そうじゃな、最終的にどの程度の種類を植えるかはまだ決まっておらんがの」
「でしたら香りの強いモノは避けて、見目がいい物だけ選びましょう」
ダークエルフたちは木の上に住んでいたが、いや、だからこそというべきか存外いろんな花を愛でる趣味を持っている。
香りの強い花を部屋に飾って香水などの代わりにしたり、色とりどりの花を掛け合わせて自分好みの色にしたりなど、観賞用にも非常に明るい。
「花を育てるのでしたら、一緒に蜂も育てた方がいいと思いますが」
「そうじゃな。しかしワシだけならばともかく、慣れておらん者にとっては蜂は危なかろう」
「えぇ、ですので花を増やすための場所を別に作るのが良いかと。やはり花をめでてるときに羽音がしたり、纏わりつかれるのは煩わしいですから」
あぁ、ダークエルフと言えど虫の羽音などはやっぱり煩わしいのかと苦笑いしつつ、花を増やすための温室を別に建てさせることを決める。
「蜂はいくらかこちらからお渡しできますので、捌を入れる巣箱もご用意いただければ」
「そうじゃな。とはいえ蜂の巣箱の作り方なぞ知らんからのぉ」
「そちらも作り方と育て方を知ってる者を来させます。こっちに居を移したいという子も居るので、その子たちが働く場にもなるでしょう」
「んむ。それは良い考えじゃな」
花を育てるも捌を育てるも、どちらも当然専門的な知識を必要とする。
それを一から教えるのも必要だが、既にしっかりと理解している者が来るのは大歓迎だ。
「ダークエルフの子らを下手な場所で働かせるわけにもいかぬからのぉ」
「えぇ、街中だと男性方からの視線が少々怖い時もありますので」
護衛がともに居ても視線を防ぐというのは難しく、遠くからじっと見てくるのは慣れないうちはなかなかに恐ろしいと、ワシとしては子供がおもちゃを前にじっと見てるようなものだから気にするなと言いたいところだが、それは何かあっても適当に対処できるワシだからであって、彼女たちの助手に庭師を付ける時も下手な者は付けれないなと、文官たちに信頼のおける誠実な者を選ぶように伝えておくのだった……




