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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3250手間

 しばらくドワーフたちと話し合っていた建築家の彼女は、ある程度話が落ち着いた段階で、なにやら随分と使い込んだ様子の犢皮紙を取り出すと、くるりと丸くならないように両端に重りを置くと、何やら細長い黒い塊を木の板で挟んでひもを巻き付けたモノを取り出して、それを使い犢皮紙に何やら描きこんでゆく。

 

「それはなんじゃ?」


「これですか?」


「んむ、それじゃそれ」

 

 集中が途切れたであろう所で彼女が手に持つモノを指差し言えば、彼女は手に持つ物体を軽く掲げてなるほどと一つ頷いた。


「これはドワーフの方々に頂いた黒い鉱石を、細く削って木の板で挟んだものです」


「ほう、それで文字やらが書けるのかえ」


「一応書けはしますが」


「なんぞ問題でもあるのかえ」


「こすれると簡単に消えたり滲んだりするので、書類などを書くのには向いてはいないかと」


 インクもなく書けるのなら随分と便利だがと思ったが、以前に同じようなことを聞かれたのか、彼女はワシの聞きたいことを先読みして、書類仕事には向いていないと首を横に振る。


「パンくずでこするだけで簡単に消せるので、何度も書き直す必要があるスケッチや下書きなどでは重宝しますが」


「ふぅむ、確かにそれでは書類には向いていなさそうじゃな」


 消しやすいということは即ち改竄しやすいということ、ワシらのように政をする上で、それはあまりにも致命的過ぎる。

 ほかに代替が無いからというのもあるが、書き換えることが難しいインクによる筆記用具を未だに使い続けている理由だ。


「して、それを使って今は何を書いたのじゃ?」


「ざっくりとではありますが、温室のデザインの草案を描かせていただきました」


 覗き込んだ犢皮紙には、楕円形の大きなクロッシュの上に円形の小さなクロッシュを重ねたようなモノに網をかけた建物が描かれていた。

 

「ガラスを使う以上は複雑な形状は建物としての強度が落ちてしまいますので、装飾はすべて柱などにして全体的なデザインはシンプルな形状にと」


「ふむ。下手に凝って崩れてしまっては意味がないからの。ワシに異論はないのじゃ」


「ありがとうございます」


 変に指示を出してゴテゴテとしたモノにする必要もなし、ここから大きくデザインを変えろなどと言う訳もなく、ワシがこのままで良いと言えば何かダメ出しがくると思っていたのか、彼女はほっと胸をなでおろすのだった……

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