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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3240手間

 今にもがっくりと膝をつきそうな技術者たちであるが、流石にそこは技術職の者たちというべきか、マナが多い環境に居ることが肝要ならば、人為的にその環境を整えればいいのではないかなどと話し始めた。

 その発想自体は間違っていない、人為的にマナが濃い空間を作ろうが世界樹の傍であろうが、マナの量という観点から見れば純粋なマナであるという点を除けば大して違いはない。

 もちろん大して違いはないとは言うが、絶対に覆せない違いというものがある、それはマナの供給だ。

 世界樹はマナを文字通り世界中に、幾本もの世界樹が分担しているとはいえ行っているのだ、マナの供給はほぼ無尽蔵といっていい。

 しかし、人為的にその環境をとなると当然どこからか、そのマナを引っ張ってこなければならない。

 いうなれば、こんこんと水が湧き出る泉の傍に住む者が潤沢に水を使ったところで誰も困らぬのに比べ、枯れ果てた荒野で僅かばかりのオアシスに湧く水を頼りに生きる者が水をがめようとしたらどうなるか。

 

「しかし、どの程度の濃度ならば寿命が延びるのか」


「だがマナ中毒はどうする、段々と慣らすとしてもマナが濃い空間から出ればまた体を慣らしてからと、寿命が延びるのなんてまた夢のまた夢では」


「マナを充満させた空間で過ごし続けるというのも、現実的ではないしな」


「そういえば、マナを吸引して健康になるとかいう似非理論と揶揄された論文が無かったか?」


「健康な者には効果がないだけで、呼吸に難がある者ならばある程度は楽になるという話だったはずだが」


 どうやら帝国では似たようなモノはすでにあったようで、じゃあそれを参考になどと真剣に検討し始めている。

 しかしそのマナ吸引器は魔石の質にマナの量が左右される上に、安定した効果どころか吸収されなかったマナが蓄積していき、マナ中毒を起こして死亡事故が起きたという落ちが付いているらしい。


「ならば、逆説的に安定したマナの供給源さえあれば、恒久的に使えるという訳ではないか?」


「地脈ならばそれに該当するだろうが、帝都周辺の地脈を吸い上げるのは禁止されている」


「郊外ならば……」


 いいのではないか、そう言おうとした者にワシが睨み軽く殺気を当てれば、彼はヒュッと息とともに言葉を飲み込む。


「地脈の利用もダメか」


「そういえば、地脈の吸い上げを禁止しているのは知っているが、何故そうしているのかは知らないんだが」


「確か遺跡があるからじゃなかったか?」


「魔物の大発生に繋がるからという話も聞いたが」


「古文書に地脈利用の危険性が書かれていたからとも」


 禁止している割には随分とその理由がふんわりとしている気がするが、厳密に決めればその隙間を縫おうとするものも出てくるであろうし、曖昧にした方が良からぬ者も使いづらいということなのだろうと、早々に地脈の利用を諦めた技術者たちを前にそれでよいのだとばかりにワシは頷くのだった……

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