3238手間
流石に首都を古くから取り囲む城壁を破壊するようなことはしないだろうが、万が一削って研究しようとしたところで、切り倒され枯れ果てた後であろうとも、彼らに世界樹に傷一つ付けることは不可能だろう。
何せ文字通り天を突くほどの高さを誇る大樹を支える幹なのだ、その強度というものは尋常のモノではない。
「しかし、そんな巨大な樹をどうやって切り倒したのだろうか」
「それだけの大きさだ、すさまじい量の木材になっているはず」
「もしかして、加工して遺跡の建材になっているのでは?」
「確かに。全く未知の素材だと思っていたが、何らかの処理をされた木材というのならば納得できる特性もある」
「ほう? それは聞き捨てならぬ言葉じゃのぉ」
確かに世界樹ほどの大きさの樹を切り倒した技術も気になるが、不敬にも切り倒した世界樹をどうしたのか。
それこそ尋常ではない量の木材となってしまっているだろうし、切り倒したということは何か目的があっての事であろうが、それが今や遺跡となっているあれら建造物の建材とするためだというのならば納得だ。
石でも金属でもない、そしてあれほどのマナの通りがよい物など、よくよく考えれば木材くらいしかないのだから当然だったと言えば当然か。
「いえ、流石に遺跡を削ったり、というよりもそもそも破壊が物理的に出来ませんし、まぁそうかなぁというくらいですので……」
「非常に本当に、甚だ不本意ではあるが、そこらに捨て置かれ、朽ち果てるよりは多少はマシというものじゃ」
ワシの言葉に技術者たちは、ただの思い付きで実際にそうだと確かめられたわけではないし、遺跡を傷つけるのは禁止されているからと、何か隠し事がばれたかのように慌てて弁明する。
それに対しそれが事実だとして業腹ではあるが捨てられるよりは、わずかに砂粒一つ分くらいはマシだとため息とともに吐き捨てる。
「まぁ何にせよじゃ。そういった行き過ぎた振る舞いが過日の愚者どもが滅びた原因じゃ」
「ですが、恐らく妃殿下の反応を見ますに、世界樹はマナを世界に供給するに不可欠なモノなのですよね?」
「その通りじゃ」
「では、なぜ我々は生きているのでしょうか? マナが無くては、引いては世界樹が無ければ生きていけないはずの我々が」
「マナそのものは、遠くの世界樹から何とか届いておるからの。とはいえその代償も大きい、それを知ればおぬしらは過去の者たちを誹るであろうな」
「代償とは……」
「それはおぬしらの生き物としての、存在としての格じゃよ」
愚かにも付けあがった者たちが、神の被造物を打ち倒し神と決別したと宣う。
そしてその愚かさの代償に己に有ったモノを永遠に失うというのはよくある話ではないかと、今の彼らにその当時のモノたちが犯した罪が残っている訳ではないが、ワシは思わず嘲るような視線を向けるのだった……




