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技術者たちはワシに具体的な原因を言い、ワシはそれに対して女神が力を行使したのだと言えば、技術者たちはワシにやはりそうではなくと続けることを繰り返すことしばし、近侍の子がスッとワシの傍にやってきた。
「神子様、彼らは神が力を行使するということそのものが、理解できていないのではないでしょうか」
「ふむ、それが滅びる理由じゃったというに嘆かわしいものじゃ」
当然と言えば当然だが近侍の子はワシの肩を持つので、何かこう改善されるのではないかと期待していたのか、技術者たちはがっくりと肩を落とす。
「おぬしらが信じようと信じまいと、女神さまの力の行使でおぬしらが滅んだのは、紛うことなき事実じゃ」
「いえ、私たちは滅んでませんが」
「それに木を切り倒しただけでっていうのも」
「ほう?」
たかだかそんなことでとでも言わんばかりの若い技術者の言葉に、ワシが手を置いていたテーブルの天板の魔晶石が砕け、今までで一番の怒気を表すと技術者たちだけでなく、近侍の子らや近衛たちまで顔を青ざめさせる。
「あぁ、やはり滅ぼすべきじゃな、ワシならば上手く帝国の者たちだけを滅ぼせるじゃろう」
「い、い、いまの発言になに、か、問題がございまし、たか」
「それが分かっていないのが問題じゃと、さっきから言っておろう。世界樹をこの世界にマナを供給しておる存在を切り倒しておいてじゃ」
壮年の技術者が何とか絞り出した声でワシに問うてくるが、問題を問題と認識していないのが問題だとすごめば、壮年の技術者は体を小さくする。
「そそ、それは神話とかおとぎ話の存在では」
「おぬしらは技術者じゃというのに、あるものを信じんのかえ? おぬしらの帝都を囲う城壁としてるもの、あれが忌々しくも切り倒した世界樹の幹の名残じゃというのに」
「あれが?」
「確かにアレは木材のような素材で出来ていましたが、いえ、ですがあれほど巨大な木など存在するのですか」
「確かに存在する樹じゃ、事実、ハイエルフはその袂に住んでおるし、ワシはずっとそれを仰ぎ見ておった」
「ですが、それがかり、いえ、マナを供給しているというのでしたら、本当に切り倒したらもう私たちは生きていないのでは?」
「別に世界樹というのは一本だけではないからの、この近くだと、海上に一本あるのぉ。とはいえ随分と距離があるから、この辺りはかなりマナが薄いがの」
技術者たちは恐怖からか、未だに体は震えているが、頭は新しい事に興味が移ったのか、実に器用な事にあれが本当に木材だとするならばなどと口にし始め、ワシがぼそりとやはり滅ぼすべきかと呟けば、彼らは慌てた様子で口を再び噤むのだった……




