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確かに彼らにとって自分たちの首都が、昔住んでいた者たちが滅んだ中心地と聞いて、心穏やかで居られないというのは分かる。
とはいえ落ち着いてから聞いた方がいいだろうと、若い技術者らが息を整えるのを待ってからワシはゆっくりと話し出す。
「滅んだ原因じゃが、おぬしらもそうなる可能性は十分にあるのじゃ。むしろ今までワシが見た中で、最も滅びに近いかの」
「そんなっ! いったい何が原因で!」
「何が原因かと言えば、おぬしらが原因じゃ」
「私たちが、原因?」
「そうじゃ。正確に言えば人が原因じゃがの」
技術者たちはワシに自分たちが原因だと言われ混乱するが、ワシが人だと言い直せば、ほっとしたような拍子抜けしたような顔をする。
「いえ、私たちの行動にせよなんにせよ、何が原因なのかというのがですね」
「ふむ? おぬしたちの行動じゃが?」
「私たちは王太子妃殿下のように大局的にものが見えませんので、是非とも私たちにわかるようにお話して頂ければ」
それで分からないのかとばかりに、お前たちの行動が原因だと言えば、壮年の技術者は懇願するように殊更丁寧な口調でそう続けた。
「おぬしらの行動としか言いようがないのじゃが…… うぅむ」
「では、滅びの直接の原因というのは」
「それは女神さまの怒り、いや怒ってはおらんかったな、やり過ぎたから排除された? 駆除された? そのくらいの感覚じゃな」
「神の怒り? それこそ神話だとかおとぎ話の出来事ではないですか、そういった抽象的なものではなくてですね」
「いや、事実そうじゃぞ? 帝都が中心なのも、あそこにあった世界樹をおぬしらが切り倒したのが原因じゃからの」
「えっとあの、おとぎ話ではなく」
「うぅむ、こういうのが良くないから滅ぼされたんじゃがのぉ……」
神を信じろ死ぬじぬ者は滅べ、何て言う極端な思想ではないが、それでも一線は超えるべきではない。
そんな風にワシは言葉を続けたが、神話のことではなく、具体的な原因をと言われ、再びワシが女神の鉄槌だといえば、そうではなくと話が平行線になるのだった……




