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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3234手間

 なぜ細かく巡りの差を知ることが出来たのか、ワシの内心の疑問は幾人かの技術者たちも持ったモノだったようで、なぜか彼らはわざわざ手を挙げて壮年の技術者に質問する。


「なぜ細かくそんなに時間を絞れたんだ? あの遺跡たちはかなり古いものだろ」


「昔の技術者たちも皆が細かかったんだろうな、出土した技術書に日付が明記されていたんだよ。幸い昔から同じような数え方だったようでな、解読にそう時間はかからなかった」


「あの技術書を解読したのはあんただったのか」


「いや、解読したのは私じゃないさ。流石に言語学までは手を出していないからな、学者の友人が楽しそうにそう語ってくれたんだ」


「なるほど。で、その日付とかがパタリと途絶えていたとかか?」


「実はその通りなんだ」


 しかし、それではその技術書とやらを書いていた者が寿命や事故などでという可能性もあるのではないか、そういった疑問も彼は誰かが問うまでもなく答えてくれた。


「技術書は複数の筆跡、つまり複数人で書かれているものだから、いきなり書ける者が一度に何か不幸が降りかかるわけもなく、しかも広範囲で同時期にというのもおかしい」


「それは確かに。だがそれこそ災害とかで、一気にという可能性もあるんじゃないか?」


「そうなんだが、その範囲というのに規則性、しかも人為的なモノがあったから、事故や災害ではないと言っていた」


「人為的? 穏やかな話じゃないな、戦争とかか?」


「いや、それもない。あれほど高度な技術書をかけるような者たちなら、戦争があれば真っ先に隔離なりするもんだろう。もちろん、その程度の技術者は当時だと下っ端の下っ端だったのかもしれない、けれどもそうだとしても被害は外から中にといった感じになるはずだろう?」


「クーデターでもなけりゃ、敵は外からくるもんだからな」


 誰かがそういうとちらりと何人かが機嫌をうかがうようにワシの方を見たが、ワシは気にせず話を促すように無表情を貫く。


「ぱったりと途絶えていったのは、まるで水面に水滴を落としたかのように、きれいな同心円状で中心から外側に向かって途絶えていってるんだ。まぁ、遺跡の位置が完全な円状で重なってるわけではないから、厳密には奇麗な同心円状ではないが」


「奇麗だろうがそうでなかろうが、確かに自然災害やクーデターでという訳でもなさそうだ。まるで爆発で吹き飛んだかのようだが……」


「円の中心と外では数巡りの差がある。だが、なぜそんな段々と好奇心が抑えられない子供のような逃げ方をしたのか、それはまだわかってないとも言っていたな」


「確かに、なんかあったならみんな一斉にってのは難しくても、数巡りあればかなり逃げれそうだしな」


「外に敵が居て逃げれなかったとか」


「もしくは、中心のモノをどうにかして取り戻したかった?」


 技術者たちは学者ではないながらも自分たちの考えを各々言い合い、ある程度の説が出たところで、壮年の技術者はにやりと笑って人差し指を立て注目を集め、何より面白いのはここからだと言えば、集まっていた技術者たちはごくりと唾を飲み込むのだった……

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