3232手間
止められれば気になるのが人の性か、恐怖に顔を引きつらせながらも若い技術者が深海に沈められた後かのようにゆっくりと口を開く。
「なぜ、止められなければならないのですか」
「知る必要はない、と言いたいところじゃが。端的に言えば分不相応じゃからじゃ」
「なぜ、分不相応なのです、人が強くなれば長生きだって出来るでしょう」
「ほう? まずはなぜその方法で長生き出来るようになると思ったのじゃ?」
「寿命の長い生き物ほど、重量に対してのマナの保有量が多い傾向があるので、そうなのではないかというのが有識者の間での見解です」
「なるほどのぉ。その考え自体は間違いではないと言えるが、それこそが分不相応といえる」
前にも帝国の別の者に言ったと思うのだが、誰もその情報を共有はしていなかったのだろう。
とはいえそれを責めることはない、何せ知らなければ知ろうとは思わないのだから。
「理由も分からず、分不相応と言われるのは、流石に納得できません」
「ほう? 理由は分からずとも、その先に進めば滅びると言われても尚、求めるのかえ」
「私は、一方的に滅びるなどと言われても、全力で抗います」
「なるほどのぉ。なれば教えてやろう、それが神意じゃからじゃ」
王の前で弑逆を叫ぶ者を前にしているかのように、ここにきてようやく周囲の者たちが若い技術者を止めるが、口から出た言葉を再び飲み込むことなぞ出来る訳もなく、場は剣呑な雰囲気にのまれる。
「神意なぞと言いたげな顔じゃの。なれば滅ぼされる理由を教えてやろうではないかえ。じゃが、その理由はおぬしらがよく知っておるのではないかの?」
「知るわけがありません」
「そうかえ? おぬしらのゴーレムやらの元はどこから来たのじゃ?」
「地下にある遺跡から発掘……」
滅びた理由は既に手元にあると言えば、別に罪を犯したことはなどと言いたげな顔で技術者たちはそろって首を傾げるが、ワシの一言に一人の技術者が書かれていることを読み上げるかのようにぽつりとつぶやく。
「なぜ遺跡となっておるのか、しかも同様の遺跡は広い地域にあるが、なぜそこまで栄えた者たちが滅びたのか」
「それは、何か災害で?」
まぁ確かに先ず思いつくのはそれだろうが、他の者たちより詳しく遺跡について知っているのか、壮年の技術者が何かに気付いたかのようにハッと顔を上げるのだった……




