3229手間
ワシが若いように見えるからと侮ったのだろう、それは致し方ないとしても、身分が上の者を侮るは自殺行為だろう。
帝国の法ではどうなるかは調べないと分からないが、神国なれば侮った内容などによっては最悪首を刎ねられても致し方ない行為だ。
そして彼らには秘密ではあるが、ワシが彼らの首を刎ねたとしても、帝国は一切文句が言えないようになっている。
もちろんそんなことは余程な事がない限りすることはないが、実質的な属国である帝国の扱いなぞそんなモノだ。
「さて無駄話をしている間に、障壁はまた使えるようになったかの」
「はい、再度使用できます」
ワシが少し離れていた若い技術者に声をかければ、彼は魔導具を確認していた技術者に声をかけ、状態を確認してからワシに返事をする。
「では早速やろうではないかえ」
「今度は四重です、防護面積が減るので普通は使いませんが」
「かまわぬ、四であろうと百であろうとワシの前では同じじゃからの」
障壁は確かに彼の言う通り四重にかさなって見え、横に少しでもずれたら障壁を無視して攻撃できるくらいには範囲が狭くなっている。
とはいえ障壁を壊すことが目的なのだから、いくら狭かろうが問題はないのだが。
「しかし、障壁の破片はどうするのですか?」
「なに飛んで来たらまた燃やせばよいだけじゃ。それに、あれは下の障壁にぶつかって飛んできたように見えたからの、今度はすべて壊せば良かろう。
壁に当たったボールが跳ね返ってきたようなものだ、なれば壁ごと吹き飛ばせばいい。
今度は先ほどのように拳は握らず、手のひらを障壁に押し付け、そのまま体幹の動きだけで衝撃波を打ち出せば、障壁は薄い膜が破れるように内側に向かって破壊され、運よく破壊されなかった部分も支えを失ったレンガのようにざらざらと崩れてゆく。
「ふむ、こんなものじゃな」
「な、何が起こった?」
「計測によれば単純な力によって破壊されてます。計測された数字を信じるのであれば、軍用ゴーレムの全力の一撃を軽く凌駕しています」
「それは…… ありえるのか?」
「機器の破損でなければ、実際に行われたことです」
障壁の魔導具には障壁が受けた衝撃を数値化する機能でもあるのか、何やら覗き込んだ技術者たちだけでなく、各々が持った機器を見ながらあちこちで悲鳴を上げている男たちに、ワシと近侍の子らは苦笑いしながらあれはしばらく収まらないだろうと、再びイスとテーブルを創り出し静まるまでお茶にすることにしたのだった……




