3226手間
障壁の魔導具を用意した技術者たちは、根っからの技術職なのだろう、障壁を破壊すると聞いて何やらいろんな観測用のモノやメモを取る道具などを用意して続々と集まってきた。
若い技術者も表情自体は懐疑的であるが、その手には他の技術者たち同様に何らかの装置を握っており、それはそれこれはこれとでも言いそうな雰囲気だ。
「この魔導具も軍で使われているモノに比べれば性能は良くありませんが新型です」
「ほう。こっちも新型かえ」
「障壁の魔導具は、その用途故に冷遇されたゴーレムと比べて、戦後でも研究開発に制限が、いえ、むしろ縮小されたゴーレムの研究費などを注ぎ込まれた分だけ発展したといっても過言ではありません」
「なるほどのぉ」
障壁は誰がどう考えても防衛にしか使えない、だからこそ兵士同様に守るための存在でも、侵攻に使うように思われるゴーレムと違って矛先に上がらなかったのだろう。
「で、どう新しくなっておるのじゃ」
「以前までの障壁は、言うなれば一枚の大きな盾でした、しかし新型の障壁は小さい無数の盾です」
「して、それのどこが良いのじゃ」
「一枚の大きな盾ですと、それが割れたらおしまいです。ですが、小さい無数の盾があることで、どこかが割れても他の盾が割れた部分を補って、高い防御性能を誇るようになっているのです」
要は前より丈夫になったということだろう、だが丈夫になっただけならばワシにとっては些細なことと言うのも烏滸がましい違いでしかない。
「まぁよい、それでいつやればよい」
「すぐに起動させます」
そういって若い技術者が手を振り上げると、ワシらから五十歩ほど離れた箇所に多角形のほんの少し薄緑に色付いた板が幾つも集まって半円を形作ったようなモノが現れた。
「なるほど小さい無数の盾ということかえ」
「はい。ここから更に範囲を絞ることで疑似的に性能を上げることも出来ます」
若い技術者がさらに手を振れば半円だった状態から手のひらを手の甲に当てたように板の集合体が重なって厚い壁となる。
「この状態で攻撃して頂ければ、ゴーレム用の武器であれば貸し出すことも出来ますが」
「いらんいらん、どのような武器もワシの爪には劣るからの」
何か武器をと言う若い技術者に、内心それは嫌がらせじゃないかと思いつつも、要らないとひらひらと手のひらを振って拒否し、何の気負いもなく散歩するような足取りで障壁の前へと歩み寄るのだった……




