3222手間
新機能を披露するにあたり、危ないので下がってくださいと言われるが、ワシが危ないからと一歩引いては名折れだろうと、むしろ一歩前へと進み出る。
「これからの披露に当たって危険が予想されますから、下がっていただけると」
「ワシが危ないからと下がるわけがなかろう。否、ワシに危険などあろうはずもない」
「ですが……」
「そも、なぜ危ないというのじゃ?」
「それは、これからゴーレムに対して攻撃を加えるからです。その際に何か飛んできたりなどで怪我をされては」
「なるほど、なれば全く以って問題ないの」
若い技術者の言葉にワシは腕組みし益々その場から動かぬという意思を示せば、彼は困ったように近侍の子らや近衛たちを見るが、彼女らは忠告通りに少し距離を取った場所で首を横に振る。
「分かりました! 私もここに立ってます」
「ふむ? まぁ良いが、それで何をするのじゃ」
「はぁ…… あちらをご覧ください」
彼は滝壺に飛び込むような覚悟で言ったのだろうが、ワシの気のない返事に肩を落とし、深くため息をついてからこの試験場の一角を指し示す。
そこには人の腕がすっぽりと入りそうな太さの筒が地面に斜めに突き刺されており、そこに駆け寄った技術者が何やら大きな卵のようなモノをその筒の中に入れる。
「あれも実験中の武器でして、今回の新機能を見せるに丁度良いので持ってきました」
「ほう、あの筒が武器とな」
「正確には中に入れた物が、ですが。アレはこの板を砕けば発動しますので、お気を付けください」
そういって若い技術者が取り出したのは、ポケットに入りそうな大きさの薄い木の板で、その表面には小さな魔石が一つはめ込まれており、そこを中心に金で幾何学模様の装飾が刻まれている。
「準備は良いか?」
「問題なく起動してます」
「よし! では行きます!!」
ゴーレムの操縦士に確認をすると、彼は左の掌の上に木の板を置くように持ち、右の拳を高く振り上げ思いっきり木の板へと拳を振り下ろすのだった……




