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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3221手間

 ゴーレムの説明をする際に、この若い技術者は技術者という人種にしては珍しく、そこに掛かるコストというものを隠すことなく、むしろ積極的に開示してくる。


「おぬしら技術者というのは、性能やら目新しさばかり語るような奴らと思っておったが」


「えぇまぁ、そういう人の方が圧倒的大多数なのは事実です。だからこそ自分がこう、説明役を仰せつかっているのです」


 だからこそ若い自分がこうして説明していると、その言葉の裏には他の技術者たちが説明というのを面倒くさがっているという、諦めやら呆れに近い感情を感じる。


「技術者同士で話す分にはそれで問題ないのですが、私たちが説明する相手は大体、技術は門外漢の偉い方ばかりですから、私たちがワインの話をされても分からないように」


「ほう。随分と弁えておるようじゃな」


「えぇ、父と兄が政に関する人間ですので、そういった方々の反応はよく分かっておりますから」


「なるほどの」


 大体技術者というのは家系そのものが、学者やらの筋だったりする。

 そうなると技術者としての振る舞いは教えられても、それ以外というのは完全な門外漢となる。

 要は騎士の子は親に剣術を教われるが、狩人の子のように弓は教われない。

 だが彼は騎士の子にあって弓を学んだので、剣も多少心得があるとそういったところだろう。


「正直に申し上げまして、こういった魔導具を披露する際は、それが目的とするモノを完遂できるか以外では、費用対効果が一番重要ですから。いくら目的を完遂できる機能を持った魔導具でも、コストが嵩むようでしたら殆どの者が見向きもしてくれませんから」


「真理じゃな。火を熾すには火花一つあれば十分じゃが、その火花の為に燃え盛る薪を用意しては本末転倒じゃからの」


「お陰様で競技会で、技術的に拮抗している場合は勝ちを何度も拾わせてもらってます」


「競技会とな? おぬしら技術屋が何を競うというのじゃ?」


「競技会と言いましても、剣で競うようなモノではなく、同じようなモノで、今回で言えばゴーレムのお披露目を複数の者で行うのです。そして一番優れている、もしくはほとんど差が内容であれば先ほど言ったようにお偉い方が選んだ者が勝ち、正式採用されたりするのです」


「なるほど、実に聡いやり方じゃ。競い合わせて良いものを作らせようという訳かの」


 確かにそういった場であれば、新技術が云々とだけ言われるよりも、それに対するコストがどの程度かなどと言われた方が勝率は高くなるだろう。

 何せそれを購入したり配備したりする側からすれば、新技術がどうのこうのなど何の役にも立たない話だ。

 その魔導具がちゃんと期待通りの効果を発揮すればいい、そしてそれがなるべく安上がりであればよいのだから。

 とはいえ神国がこのゴーレムを購入するわけではないのだが、ともかく脅威になりそうな機能はないなと考えていると、目玉の新技術がと先ほどまでの話はどこに行ったのか、今までで一番興奮した声で若い技術者はその新技術を稼働させるように操縦者に指示を出すのだった……

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