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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3220手間

 ゆっくりと立ち上がったゴーレムは、まるで身動き取れなかった病人が突然体が動くようになったかのように手足の動きをじっくりと確かめると、ゴーレムの頭部からくぐもった、しかしはっきりと大きくされた声が響く。


「主任、ゴーレムの動作に不備はないようです」


「当たり前でしょう、我々がどれだけチェックしたのか貴方も知ってるでしょう」


「そうでしたね。では、実働試験を開始します」


 試験などと言っているがゴーレムの動きは滑らかで、これまで何度も動かしてきたことがよく分かる。

 畜魔器と呼ばれる巨大な箱から伸びる太い線のせいで走り回るようなことはできないが、繋がれた犬のように狭い範囲で動く様子を見る限り、走っても問題なく動くことが出来るのは想像できる。


「新型ゴーレムは人の筋肉を参考に、新式の駆動部を設計しそれによって小型化による出力の低下を抑え、同時に効率化により同重量での出力向上によるマナ消費量増加を最低限に抑えています」


「なるほど?」


「更に関節部には耐摩耗性を高めた新素材を利用して大規模な整備の回数を減らし、尚且つ共通規格を定め交換を容易に出来るようにしております」


「ふむ」


「また出力向上に伴う全体の運動バランス変化に対応するため、中枢制御機構は完全新規設計のものを使っており、そのために以前よりも操縦士の操作への追従性が上がり、まるで自分の手足のようにスムーズにゴーレムを操れるようになっております」


「ほう」


 若い技術者が朗々と演劇でもしているかのように、このゴーレムに搭載した新機能を説明していく。

 その間にも操縦士は彼が説明する箇所を証明するように動くが、追従性がどうのと言われても操縦士が隠れて見えないので、ワシからはただゴーレムが動いているようにしか思えない。

 

「そして新規の技術ではないのですが、窓がなくとも外部の様子を見れる投影装置は非常に高価なのですが、操縦席が小型化したことにより少ない面積で済むようになったため、安価に抑えることが出来ます」


「それはワシに言っても意味がなかろう」


 別にこのゴーレムを購入したりするのは神国ではないのだ、別に安いですよなどという情報は必要ない。

 それに何より、話を聞く限りこのゴーレムは新技術の塊だ、投影装置がどれほど高価でどれほど安価に抑えられたかは知らないが、それ以上に高価になっていることは間違いない。


「それにじゃ、新技術というのは往々にして高価じゃろう」


「え、えぇ、まぁそうですが…… それでもこのゴーレムと同様の仕事ができる兵士を育てる費用に比べれば」


「それも一理あるじゃろうが。まぁ、それもワシが頭を悩ませるべきことではないの」


 開発も整備するも帝国の懐事情だ、ワシには関係ないことだと話を切り上げれば、若い技術者は気を取り直して、今度は新型ゴーレムに搭載された新機能を、新しいおもちゃを手に入れた子供のように語り始めるのだった……

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