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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
3234/3473

3208手間

 許可を出すための書類にサインを書いていると、確かにこんなモノ、暗黙の了解として許可を出していることにしたいと思うようなものばかりだった。

 大体は当時の状況を思えば妥当ではあるが、今の状況とはそぐわないというものであるのだが、中には本当に何故こんなモノを?と疑問を覚えざるを得ないものが混じっている。


「なんじゃこの、陽が天頂を過ぎた後は弓の練習をしてはいかんという法は」


「それは…… 本当になんなんだろうね。確かに騎士や兵士はあまり弓の訓練はしないけれども、全くという訳ではないし、そもそも完全に禁止している訳ではなく、その町や場所の権力者の許可さえあれば大丈夫というのもよく分からない」


「クリスも由来を知らんのかえ」


「古いものだったり変に細かすぎるものは、そもそもの制定理由が残されてなかったりするからね。それも変な法ではあるけれども、当時は何か必要な理由があったのかもしれない」


「そうかのぉ」


 存外くだらない理由で作られたものやもしれないが、それを知る手段はもうないので想像を膨らませるしかないが、いくら考えてもしっくりくるようなものは思い浮かばず、まだまだサインすべき書類はあるのだからと頭を振って変な考えを追い出して、次の書類に手を伸ばす。

 幸い次もその次も、制定された理由が見えるようなものであったので特に問題はなかったのだが、また次と手を伸ばしたところでその内容が先に目に入り、思わず伸ばした手を止める。


「この手紙を運ぶものは、道中で犬と目を合わせてはいかんというのは……」


「んん? そんな法あったかな」


「その書類は私どもが作成いたしました。一々の許可でしたら文官の権限でも可能なのですが、恒久的なものとなりますと」


「なるほど、こんな法もあるのか、不勉強だったな」


「いや、勉強も何もあるまい、こんなものを覚えておってなんとなるのだ」


 酒の席での笑い話くらいにはなるかもしれないが、それでも少々話としては弱いだろうが。

 それにしても、文官が言ったように彼らでも許可は出せるが、長期的な許可は無理といった類のモノは存外多く、その法も宿屋では果物の皮をむいてはいけないなどという、本当に使いどころがあるのかどうか分からないものばかりだ。


「しかし、これほど許可を出すだけで良いモノが多いのは少々心配になるのぉ」


「あまり知られていませんが、許可制の法は一段効力の弱いものですので、そもそも破ったとしても罰則は大したものではありません。ですがそれもそれで手間がかかりますから」


「じゃから暗黙の了解で許可を出しておるようにしてるという訳かえ」


 やはりそれはそれでどうかと思うのだが、まぁこんなモノと考えてしまうような法ばかりなので、ワシも大概とは思うが同じように暗黙の了解として処理してしまうだろうなと口にはしないものの心中で過去の者たちに同意するのだった……

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