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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3207手間

 クリスは今回のことを受け、折角だからと今まで暗黙の了解で明文化せずに曖昧にしていたアレコレを、これを機にしっかりと文書に残そうと思い立ち、それを聞いた文官たちが思わず顔を青くさせる。


「そんな細かいところまでは流石にやらないさ」


「では、どの程度まで……」


「そうだな、使用頻度の高いものだけでいいだろう」


 法にしっかりと明記されているが、実は普段は無視していることなど、それこそ倉庫に放置していた毛布の埃ほどにあるだろう。

 それ全てをとでも言われてると思っていたのか、使用頻度が高い、黙認されることが多いモノだけをとクリスに言われ、彼ら文官はあからさまにほっとしたような顔をする。

 

「それではまずどちらを」


「今言っていた小規模な、それこそ些細な祝い事など目的とした集会だね。それをいつもの定型文として出せばいいだろう」


「かしこまりました」


 そうしてクリスが書き出していく法の中には、実に変と言えばよいのだろうか、そんなことまでというものがいくつかあった。

 屋敷内で家主の許可なく火を使ってはいけない、刃物を持ってはいけない、甲冑をはじめとした防具を着てはいけない。

 そんな一々守っていては屋敷の仕事が滞りそうなことまで、わざわざ法で縛っていたのかとワシは苦笑いする。


「昔の、それこそまだ国内情勢が安定していない時期に、家人による家主殺害による乗っ取りなどが横行していたらしくてね、その時の法がまだ残っているんだよ」


「とはいえ、その当時のモノを律儀に今も守る必要はなかろうて」


「僕もそうは思うけど、これはすべて神王がお認めになられたことだからね。要は神の定めたことだから破ることなかれと、今の今まで、ね」


 法を定めたのが只人の王ならば、それを破棄するも改ざんするも簡単であったろうが、事実そうだとは限らないが彼らの信仰する神が定めたとなれば、それを破るも変えるも難しいというのは分かる。

 

「それで皆、黙認しておるということかえ」


「正しく言うなれば既に許可は出していると、まぁ、そういうことだね」


「で、それを今から全部言い訳ではなく本当にちゃんと許可を出している状態にすると、そういうことじゃな」


「もちろん、明確にではなく曖昧にしてはおくけれど」


「まぁ、細かく決めるとそこを悪用する者が出るからのぉ」


 はっきり決めた方が判断をするときに楽ではあるのだが、きっちりと線引きを決めているとそこを悪用する者がどうしても出てきてしまう、だから法に明記された線引きはどれも曖昧にする必要があるが、こういう時は面倒だなとクリスと二人でため息をつきながら、クリスが書き出す許可証にサインを書いていくのだった……

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