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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3206手間

 この集会に関する許可制度であるが、全く以って非合理的な慣習、いや、法か。

 何せこの許可は、集会を行う街で最も権限のある者が行う必要があり、それはどんなに些細なものだとしても、提出されたのならば裁可しなければならない。

 そしてこの法を遵守するのは、それこそ几帳面で生真面目な者たちであり、そんな気質の者は平民にしかいない。

 貴族ならば清濁併せ吞む必要があり、この法の事も知悉しているので、ちょっとした集会ならば黙認されるということも良くよく分かっているからだ。

 

「近所の子供たちが集まってお祝いのパーティーがしたいから、かえ」


「はい、提出されたからには……」


「分かっておる、分かっておるが、今までこのようなモノを処理した覚えはないのじゃが。なぜ今になって増えたのじゃ」


「いえ、どうも昨今の大会ブームとでも申し上げましょうか、それに伴い集会に関する法などを調べた者がいるようでして」


「ふむ?」


「その者が、些細な、それこそ今ご覧になった極々ささやかなパーティーでも、権力者の許可が必要と法に明記されたのを見つけたようでして」


「それを言いふらして、慌てて皆が許可を出し始めたということかえ?」


「はい。今回この許可を出しに来た者の他にも、今まで法を破っていたので自首すると共に、妻と娘には咎がないようにと嘆願をしてきた者も」


「それでどうしたのじゃ?」


 当然、些細な事でも許可を求めようとする生真面目な者であるならば、知らなかったからといって今まで法を破っていたとなると、思い詰めて自首してくるのも、まぁ自然な事と言えば自然な事か。


「このような些細な祝い事は許可を求めずとも、既にすべて執り行っても良いと裁決されておりますと、定型な言葉ではございますが」


「ふむ、なればそれは周知させねばの」


 本来その言葉は黙認している集会に対して、なにか横槍を入れて来た者に対する定型文、要は言い訳ではあるのだが、だが今回は悪意を持って法を持ち出しているのではなく、完全な善意というよりも罪悪感で言い出していることなので、その言い訳を事実にしてしまうかと、ワシはお祝いの集まりの許可だけすると腰を上げ、さっそくとばかりに足早にクリスの下へと向かう。


「告知だけにしようと思っていたんだが、実際に許可を出していることにした方がいいのかい?」


「わざわざ自首しに来るような者がおるのじゃぞ? 実際に許可を出して居る方が良いじゃろう」


 告知だけで実際はそんなことを許可していなければ、そこに何か言及された場合は問題になるので、手続きやらが面倒ではあるがちゃんとしておいた方がいいだろう。

 今までそんなことをわざわざするような者は居なかったが、もしかしたら善意で何か言ってくるような生真面目な者が出てくるかもしれない、そうクリスに言えば確かにこんなことでわざわざ自首したがる者が居るくらいだからと納得し、ささやかなパーティーなどでは許可は必要ないように手を回すことにするのだった……

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