3205手間
武闘大会が人気が過熱してくると、自分たちも何らかの大会を開きたいという嘆願が届くようになってきた。
正確に言えば、クリスが処理していたそれがワシの下にまで回ってくるようになっただけだが。
「ふむ。腕相撲大会のぉ」
「王太子妃殿下には集会の御裁可を頂ければと」
「なるほど、大会の是非ではなくそちらかえ」
腕相撲大会も力自慢が集まる催し物ではあるが、武闘大会のように武力を行使するわけではないので、集会を許可するのみで良いらしい。
警備などについても、大会とは名乗ってはいるものの、提出された書類によればかなり小規模のものなので、小難しい規約もない。
ただそれでも同好の士を募る集会を開く場合は、領主や町長などの許可が必要になる。
これはまだ一都市国家だった頃の名残で、要は集まって良からぬことを企てるんじゃないぞという法に基づいたものだ。
「よい許可しようではないかえ」
「あと、こちらの集会と広場を利用する旨への御裁可を」
「こちらは弁論大会とな」
「弁論とは名乗ってはおりますが、趣味を披露する場のようでして、認可の後に人を募るそうですのでまだ内容そのものは報告にありませんが、芸術とはまた違った分野の話をするそうです」
「ふぅむ。許可はするが、警備の者を必ずつけるように、身内ではなく外部から雇い入れるように条件を付けるのじゃ」
「異論はございませんが、なぜそのような条件をお付けになられるのかお伺いしても?」
「どんな話をするか知らぬが、趣味の話をするのじゃぞ? 絶対に白熱して殴り合いになるじゃろう」
「なるほど…… 確かに趣味趣向が相容れぬ場合は、かなり険悪な雰囲気になりますね」
「分かったようで何よりじゃ」
何の趣味かは知らないが、大抵自分の趣味の方が優れてるだとか、人の趣味を否定する者が現れるものだ。
そしてそういった者によって自分の趣味を否定された場合は誰しもが憤慨するもので、そうなった場合に止める者が居なければ大変なことになるだろう。
具体的に言えば、今後同じ趣旨の集会を禁止するとか、程度によっては集会の許可そのものを禁止、取り消しもあり得るのだから。
それを事前に防ぐ手当てをしておくのは当然であろうと、文官に言った通りに条件付きで許可を出す旨を書類にしっかりと書き示すのだった……




