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兵士の部は一般の部のように変なケチが付くこともなく、今後しばらくは語り草になるであろう勝負で幕切れとなった。
しかしそうなると心配なのが次の騎士の部の盛り上がりだ、流石にあれほどの劇的な展開を望むのは難しいだろう。
そうなると騎士たちの評判にも関わってくるが、そうワシが零すと貴族の婦人方がそれは大丈夫だと笑顔を見せる。
「ほう? そこまで言い切るとは、なんぞ確信でもあるのかえ」
「えぇ、その通りで御座います。騎士の部を楽しみにしておりますのは、今までの者たちとは別ですので」
「ふむ?」
騎士の部に望んでいるのは、あのような劇的な勝負ではないのだと、にこやかに婦人は語り他の者たちも然りと言わんばかりに頷いている。
彼女たちは貴族なので、参加している貴族の中に親兄弟や婚約者などがいるだろうから、確かに見る部分が違ってくるだろうが。
「いえいえ、それは平民の方々も同じで御座いますよ」
「なるほど? なれば楽しみにしておこうかの」
いくら前座で華々しいものがあろうとも、それが陰りになることはないとばかりの彼女たちの反応に、何か面白いものでも見れるのかと、ワシはそれ以上何があるかを聞くことはなく楽しみに待つことにした。
そうして待つことしばし、騎士の部の開幕が告げられると同時に最初の試合を行う選手が入場し、その瞬間に会場には黄色い悲鳴が響き渡る。
「なるほど…… そういうことかえ」
「騎士たちの戦いではなく、騎士そのものを見に来ている、そういうことですか」
「えぇ、ですがもちろんその戦いも楽しみにしていますのよ?」
「今までの方々よりも、見ていて華やかで楽しいものですから」
騎士の部の人気などに陰りなしというのは、客層が見事なまでに違うからだろう。
騎士たちは貴族なので、その見目は基本的に麗しいと言っていいだろう。
普段はまず見れないそんな者たちが間近に見れるのだ、なるほどそれならば人気もでるし、今までの試合は関係ないというのも頷ける。
「ともかく、騎士らの戦いというものを見せてもらおうかの」
「今回は前大会優勝者含めて十一名ですので、お気に召していただけるかと」
騎士の部が一番人が多いのかと頷けば、出場への熱意が高いのだと、接待の者はその熱意の裏側を感じさせるような苦笑いを一瞬見せ、なるほどとワシも苦笑いでうなずくのだった……




