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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3187手間

 劇的な大逆転、それを目の前で見せられた観客たちは興奮冷めやらぬまま、今見た試合の感想を喧々諤々とでも言えそうな程の熱気で語り合っている。

 当然それは貴族であろうとも同じで、流石に庶民たちほどの興奮を見せてという訳ではないが、特に男性陣は少年のように目を輝かせているのが分かる。


「いやいや、今のはすごかったですな。私はてっきり負けは決まったものと思っていましたが」


「えぇ、それは私も同じですよ。しかし、それを見事に見抜いた王太子妃殿下の御慧眼は素晴らしいですな」


「ふっ、ワシはただアレが諦めておらんと言っただけじゃよ。そこから勝てるかどうかは、あやつ次第じゃったからの」


 誰もが負けを疑わなかった状態で、ただ一人ワシだけが彼の勝ちを予言していたと貴族たちは持ち上げるが、ワシはただ単にまだ諦めてはいないと言っただけで、別に彼が勝つと信じていたわけではない。

 そこからの逆転を狙えたのは、偏に本人の資質と運に由るものだろう。


「勝負は時の運というが、あやつは正しくそれを手繰り寄せたと言えるじゃろう」


「王太子妃殿下は、勝負に運も必要だとお考えで御座いますか?」


「勝つにあたって、己の手であとわずか足りぬ箇所、欠けた箇所を補うが運というものであろう」


「王太子妃殿下でも、そのように感じた時が?」


「いや、ワシには、こと勝負に置いて足りぬ欠けるなぞあり得ぬ事じゃ」


「向かう所、敵なしという訳で御座いますか」


 戦いにおいて、ワシに足りぬところも欠けたところもありはしない。

 ただ単にそういうこともあると、ワシは知っているだけに過ぎない。


「そもそもじゃ、こういった場の勝負であれば同じ舞台に立てはするじゃろうが、ただの戦いであれば相手が出来る事と言えば、せいぜい祈ることだけじゃろうが、そもそれすら出来ぬやもしれぬがの。つまるところ、向かうところ敵なしではなく、ワシの敵になりうるモノは存在せぬということじゃ」


 ワシの敵になれるなぞ、思い上がりも甚だしい。

 もしワシの前に立ちはだかりたいというのならば、雪崩や濁流を単身でそれこそ歯牙にもかけないようなモノでなくてはならない。


「それを思えば、帝国のゴーレムをはじめとした魔導具はなかなかに面白かったの」


「帝国はそれほどまでに強かったのでございますか」


「いや? 別に強くはなかったのじゃ。なかなかに面白い事はしておったがの」


 創意工夫というものは面白いものがあった、自分の技量で賄えぬ部分を運ではなく道具に頼りそれを面白い方向に伸ばしていたのは注目に値すると、興味深そうに聞いてくる貴族たちに話せる部分だけであるが語るのだった……

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