3181手間
ワシが熱弁している間にも下では滞りなく準備が進み、試合は兵士の部の始まりが告げられた。
「今回は計九名による勝ち残りで御座います」
「ほう、ところでその戦う順番などはどう決まっておるのかえ」
「基本的には公平を期すために、クジ引きで決めております」
「ふむ? 基本的にとはどういうことじゃ?」
「前優勝者と準優勝者は予選の免除と、その時の参加人数に応じて対戦数が少なくなるように配置されますので」
「なるほどのぉ」
確かに一番確実で公平なやり方であり、勝ち進んできた者と前優勝者が決勝で戦いやすくなる。
とはいえクジに細工がなどと言えばいくらでも出来そうであるし、特に騎士の部では色々と忖度などありそうだ。
「神子様、最初の試合が始まりそうですよ」
「ふぅむ、あの者たちも全く同じ姿じゃの」
「兵士たちは、皆が規定の装備で戦うことになっておりますので」
「ほう、なるほどの」
会場に居る兵士二人は、同じような革鎧に身を包み、片手で扱いやすい剣と盾を持っている。
それを使い剣を盾で防ぎ、そこから反撃の一撃を加え、時には盾で打ち付けと、先程までの一般の部に出ていた者たちよりも、明らかに訓練されている動きで戦いを行っている。
「なるほどなるほど、流石に一般人よりは戦えるようじゃのぉ」
「武闘大会に出るようになって、彼らもますます研鑽に身を入れるようになったとのことですので、正にその成果で御座いましょう」
「それは良い事じゃな」
ただ研鑽するというのは、人によってはその努力を続けることが難しい。
しかし、武闘大会で良い成績を修め、更にはそれを周知出来るというのは、研鑽に分かりやすい目標というものが出来て、兵士たちは以前よりも訓練に身が入っているという。
とはいえそれ自体は良い事だが、本業が疎かになってはいけないが、そんな話は聞いていないので大丈夫なのだろうと、そういった水を差すようなことは聞かずに、接待の者の解説を聞きつつ兵士たちの試合を眺めるのだった……




