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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いで…?
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3180手間

 どれほど重い理由があるのか、そんな風に身構えていた貴族たちは、ワシの嫁探しという言葉に鳥が豆でもぶつけられたような顔で呆けている。

 確かに期待するような何か物語に書けそうな理由ではないが、彼らからすれば文字通りの死活問題なのだから、十二分以上に重い内容ではある。

 

「確かに血筋を繋げるは大事ですが、それならばやはり一番強い者との戦いより、無粋ではありますが相手を望んだ方が良いのではないでしょうか?」


「えぇ、私もそう存じます。名誉は傷つけられましたが、武闘大会の優勝という称号は十分に魅力的、引く手は数多では」


「ヒューマンであればそうじゃろうが、彼らにとってはそうではないのじゃ。元の強さは大前提ではあるが、一番強いモノと戦い勝てれば万々歳、負けたとしても生き延びればその手腕が評価されるのじゃよ。ただ強いモノと戦うならば阿呆でもできる、彼我の実力差を理解し死なずに帰ってくることも必要な事なのじゃ」


 強く生き残れる者、それが獣人にとって、特に彼のように獣に近い者たちはその生存原理に忠実だ。

 獣に近い獣人はあまり街には近寄らないが、番の相手は獣に近い獣人でなくても良いので、こんな街中の場でも問題はないのだ。

 

「とはいえ、大抵の者はそんな大げさなことはしておらんがの。野に住んでおったとしても、強いモノなどと出遭うことは稀じゃからのぉ、じゃからあやつは随分古風でありながら街中にやってくる珍しい輩じゃ」


「なる、ほど? 文化の違いを感じますなぁ。しかしながら王太子妃殿下、一番強い者と言われましても、規定で騎士や兵らは一般の部の者とは戦えませぬ。それは近衛や近侍の方々でも同様で御座いましょう」


「何を言っておるのかえ、あやつが望んだのは一番強い者じゃぞ? なればワシが出るのが当然であろう」


 この場で一番強い者、それは満場一致でワシであろう、いや、ワシ以外にはあり得ない。

 なればワシが出るのが必定、彼にとっては子々孫々語り継がれる栄誉であろう。


「ですが、王太子妃殿下に万が一…… 彼のもつ大きな剣は恐ろしいものでございます」


「あれの持つ大剣なぞ、帝国のゴーレムが持っておった剣に比べればナイフのようなものじゃ、ワシにとって恐れるような物では決してないし、何よりワシに毛ほどの傷もつけることは能わぬじゃろう」


 マナが込められていない攻撃は、否、込められていようとも尋常なモノでも同じこと。


「それにじゃ、ワシの強さを知らぬ者も忘れた者も増えて来ておるからの、それを示すに丁度良い」


「王太子妃殿下がお強いのは聞き及んでおりますが、それでは彼の面子を潰すことになってしまうと愚考いたしますが」


「それはあやつ次第じゃの、ひるまず挑んでくればよし、そうでなければ虚言を吐いたものとして後ろ指を刺されるだけじゃよ」


 一番強い者をと自分で望んでおいて、勇敢に戦うことを放棄すれば誹りを受けるは当たり前、そんな臆病者に嫁ぐ奇特な者はいないだろう。

 しかし逆にたとえ負けると分かっている相手でも、最後まで勇敢に戦えば、その勇気を褒めたたえてくれるものは現れるのだと貴族たちを前に力強く説明するのだった……

 

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