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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第一章 女神の願いを叶えよう?
3/3409

3手間

 《起きてください、肉体が出来てしっかりと魂も定着しましたよ》


 そんな女神さまの声で起きてみれば、さっきまでのふわふわした感覚はない。

 しっかりと自分はここにいるんだ、と感じるけれども、そんな事よりもどんな見た目になっているのかが気になる。


 《では、気になっているようなので鏡を見てください》


 目の前の真っ白の、何もなかった場所に鏡が出現した。

 鏡の中の人は、まるで新雪のような白銀の髪、その髪と同色のもふもふな狐耳。

 傷一つない白磁のような肌、まさにといった感じの美しい白魚のような手指。

瞳はアイオライトの様で、見事な菫青色の大きく丸々とした目は上瞼に隠れる程。

 胸は明らかに、大人とは言えない身長には似つかわしくない程大きく、到底この小さな片手では収まりきらない。巨乳とまではいかないが、そのちょっと手前ぐらいのつんと上を向いた美乳。

 腰は折れそうなほど細く、キュっとした小尻。そこには髪と同じ色の、耳よりもさらにモフモフな九本の尻尾。

 足は儚いほど細いが頼りないほどではなく、ほどよく肉がついている。

 全体的にも調和のとれた、まさに女神の創りたもうた美少女。

 そう美少女が全裸で目の前に!!!

 それに気づいたのか、鏡の中の美少女は胸と股のあたりをサッと隠す。


「女神さま、なんで突然こんなことを!」


 《それはあなたですよ》


「いやいや、俺は男ですよ!」


 そう叫んで色々思い出そうとする…。


「あれ?男だよね?…うん、男だ」


 かつていた彼女の存在なんかを思い出した。けれど、居たこと自体は思い出したけれど、それ以外がわからない。

 どんな声だっけ、どんな性格だっけ…なんて名前だったっけ…。

 まるで塗りつぶされたかのように、そこだけが思い出せない。


 《もう転生しましたし、前世と呼んでいいでしょう。その記憶は消させてもらいました》


 なんで!と叫ぶ間もなく女神さまの説明は続く。


 《魂の在り方が前世より強い今度の世界において、男女の差異に悩むのは、非常に魂に対しての負荷が大きいんです。ですが、逆に完全に記憶を消してしまうと、これまた齟齬による負荷があるので、体にある記憶だけ消させていただきました》


 脳味噌にある記憶は消してもそこまで問題ないらしい。

 けれども思い出というのは魂に記憶していて、そこを消してしまうと魂が削れてしまうらしい。

 体と記憶の性別に齟齬があると魂にまで負担があるため、記憶を消したと。

 確かに性の不一致で悩んでる人は多いし、悩みはストレスになるしな…。

 そう思い、恐る恐る自分の体を見れば、まだ胸と股間を隠した状態で固まっていた。

 男であるなら股間だけ隠せばいいはずなのに、無意識に胸も隠してるとか。

 これ消された上に、女だと洗脳されてない…?


 《さて、その体を認識してもらいましたし。なぜ女性にしたのかの説明と、向こうに行った時のあなたの設定を話しましょう》


 設定って言っちゃったよ。

 先ほどの洗脳疑惑の目線やメタ発言をどこ吹く風と、女神様は説明を続ける。


 《まず、なぜ獣人であるのかについて話をしましょう》


 完全に今までいなかった筈の人が存在するのは明らかにおかしい。アメーバにだって親個体はいる。

 我らが人が生まれるには、当然だが両親が必要。代を重ねていれば、当然それに見合った数の人々が必要となる。

 そこで女神様はまず、何故獣人以外が選択肢から省かれたのかを教えてくれた。


 まずヒューマンは、生まれてから1年間は名前がなく

 1年後の誕生日に、世界樹を信仰するという宗教の教会に赴く。

 そこで洗礼と共に名付けを行う。これは出生率の低さや幼児の死亡率が高いため。

 逆にその人が死ぬと、今度は名を教会に返す。

 教会の洗礼で名を決め、それを管理している。それが一種の戸籍のようになっており、

 突然ヒューマンが来ても誰だ、なぜ洗礼を受けてない。何者か? となるそうだ。

 ドワーフや、ハイエルフも似たようなものらしい。


 エルフや獣人はこの決まりから外れる。何故かといえば、森などの奥深くの里から基本出て来ない為。

 特にエルフは穢れたマナに非常に弱く、エルフの里の結界の外では満足に生きられない。

 獣人は逆に穢れたマナに強く、極限環境以外どこにでも住めるらしい。

 そしてその獣人は基本的に里の外には出てこないが、極々稀に外に出てくる変わり者がいる。

 里から出てきたといっても、里の位置は部外秘という、なんとも今の自分にとって都合のいい掟がある。

 

 街で産まれ生きている獣人も、そこまで数は多くないもののそれなりにいるため、その掟も知れ渡っている。

 そのため、どこの部族の里から来たか、なんてことは聞かれない。

 だから、突然出てきても何ら怪しくない、里出身の獣人という設定にすると…。


 そして重要なのが、なぜ女性である必要があるかというと。

 獣人は女性上位社会で、獣人の男子はそもそも出生率が低い。

 そのため男子は里の中で、蝶よ花よと育てられ外部に出されることはない。

 箱入り娘ではなく箱入り息子、深窓の令息ということだ。

 だから外に出てくるのは女性のみ、身体能力も女性のほうが高いから、とそういう理由があった。


 《と言うことです。理解していただけました?あとは言語と読み書きですが、今から教えるのは面倒なので、今あなたが使ってる言語と置き換えさせてもらいますね》


「今面倒って!あと置き換えるってどういうことなのじゃ?」


 ん?のじゃ?


「確かに、ワシのしゃべっとる言葉が日本語じゃなくなってる気がするのじゃ」


 あえ?ワシ?のじゃ?どういうことなのじゃ?


 《どうです?かわいいでしょう?》


 えーっと・・・?もしかしてこの女神さま・・・


「趣味にはしったのかえ?」


 《はい、容姿も(私の)希望をこれでもかと盛らせてもらいました》


 この女神さま…オタクかぁああああああああああ!





(やっと)冒険がはじまる ドキドキがはじまる

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― 新着の感想 ―
[良い点] のじゃロリ狐っ子は尊いから仕方ないね!
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