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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第一章 女神の願いを叶えよう?
28/3463

28手間

 マナ中毒で倒れた三人をとりあえず引きずって一か所に纏める。

 もちろんサンドラの場所にアレックスとインディの男二人を、だが。

 インディを引きずって行く頃には、既にアレックスは体を起こす程度には回復していた。

 なので、とりあえず生き残りのスライムが来ても対処できるだろうと、東西と北の扉の先を見ることにした。


 西の扉の上には女神が伝えたとされる文字が刻まれた看板が、今までの部屋とは違い未だに掲げられたままだった。

 この文字は名称はそのままだが女神文字と呼ばれており、看板には≪資料室≫と一言だけ女神文字で刻まれていた。


「ふむ、集積施設のコアユニット奥にあるにしては無難な部屋じゃの」


 扉に手を触れると、また青い波紋が円状に広がり扉が開いていく。

 真っ暗だったが、広場同様足を踏み入れると自動で照明が点く。

 室内はそこそこの広さがあり、中央には十人くらいが囲んで座っても十分な広さの机と椅子があり、

 右手の奥に扉がある以外は壁一面の本棚と本が残されていた。


「ふむ?ここの本は持ち出されておらんのか」


 本を見る前にとりあえず奥の扉を見れば、扉には仮眠室と書かれた看板が打ち付けられていた。

 扉自体もドアノブで開けるタイプの普通の扉で、中を確認してもベッドがいくつか置いてあるだけだった。

 いくつもある本棚をざっと見てみたが、背表紙を見るだけでもかなり朽ちている事がわかり、無事な本はただ一つとしてなかった。


「う~む、経……察…料。これも文字は一般的に使われとる奴じゃな、ずっとこの文字が使われとるのかの」


 適当に選んだ本を抜き出し、表紙に辛うじて残っている文字を読んで中身を捲ってみれば。

 虫食いだらけですでに朽ち果て、残った文字もインクは掠れ読むことさえ不可能で、触れればボロボロと崩れ去る始末。


「やばいものでもあれば処分しようかと思っておったが…この状態であれば問題は無かろうかの」


 目ぼしいものも無く資料室から出ると、三人は既に起き上がり、中央の魔晶石があった場所で何やら話していた。


「体調は大丈夫なのかえ?」


「まだ怠いが、とりあえずは大丈夫だ。魔晶石の欠片でも無いかこの辺りを見てたんだが、見事に砕け散ってて塵一つないや」


 近づいて話しかけると、そうアレックスが返してきた。


「ふむ、ワシはもう二つある部屋を探してみるが、どうするかの?休むなら今出てきた部屋の奥に仮眠室があるから使うがよい」


「いや、今は開きっぱなしだが、いつ閉まるか分からないしやめておく。それに歩き回るのもまだ辛いし遠慮しておく」


「そうか、ではワシは別の部屋を見てくるとしようかの」


 そう言って今度は東の扉へと向かう。中央である北は本命だろうし、お楽しみは最後まで取っておく性分なのだ。


「やはり看板は女神文字なのかの、今度はえーっと、≪マナ収縮実験室≫とな…これは…やばい香りがプンプンするのじゃ」


 変なものでもありそうな名前を前に覚悟を決め、扉を開け一歩踏み出せば、資料室より少し広い室内に大量の機械が所狭しと置かれていた。

 懸念していた培養カプセルとかそんなものも無く、機械も壊れているのか稼働している様子はなかった。


「ふぅむ、変なものも無さそうじゃし一安心かの?」


 部屋を見渡しふと、機械の上に無造作に置かれた本に目が留まる。

 その本は真っ赤な背表紙で、黒い機械の上で非常に目立つ。

 そして何より、まるで新品かのようにきれいなままだったのだ。


「なんでこれだけ無事なんじゃ…?実験の結果とかかの?ふむ、これは日記のようじゃの」


 中身も綺麗なままだったので少し読めば、今日のご飯はおいしかっただの、誰と誰が喧嘩したなどの他愛もない日記が続いていた。

 適当に読み飛ばしてみれば途中から実験がうまくいき始めて嬉しいのか、段々と詳しい実験成果に触れるような内容になっていく。

 そして日記の終わりに近づけばこの施設がこの様な事になるまでの顛末が事細かに書かれるようになっていた。


「これはビンゴの様じゃの…さてと、碌でもないことが書かれて無ければよいのじゃが…」


 そうひとりごち、詳しい実験内容になってくるあたりから再度じっくり読み進めることにした。





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