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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いでもう一度
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241手間

 麓の神殿はまるでパルテノンの様、そこから伸びる大回廊こちらはまるで石造りの三十三間堂、山頂にあるは御伽噺に出てきそうな見た目の主城。

 側室達が住む西宮は、主城に比べるとかなり大人しく西洋の実用的なお城と言った感じだ。兵士たちが詰めている軍の建物の東宮は、堅牢な要塞と言った感じを受ける。

 そして主城の前、大回廊の頂上付近の脇にはなんの為なのか風車が二基設置されていた。


 港街から出発して数日、漸く王都へと着き盛大なお出迎えでもあるかなと思っていたがそんな事はなく、ゆっくりと麓からの王城の姿を堪能することが出来た。

 シャクアに促され神殿へ足を踏み入れると、見上げる程高い天井に何十人も横に並んでも平気そうな程のとても広い通路。

 神殿から大回廊へどう言う風に繋がっているのだろうかと思ったが、シャクア曰く神殿から大回廊に繋がっているのではなく、大回廊に神殿がくっついている様なものらしい。

 この通路の左右に祈るための部屋などがあると言う、そして奥にはこの広い通路を塞ぐ巨大な門が、これも祭事の際は全開になるが普段は門の中にある常識的な大きさの門だけを使うらしい。


「それにしても大きい建物じゃのぉ…」


「ここまで巨大なのは、三代前の国王が戦争で住む場所を失った人の為の仕事として斡旋したのと、当時流行った疫病を鎮めるための祈りの場を提供するために造ったからなのよ」


「ほほぅ…なるほどのぉ…」


 古今東西、巨大な建造物を造る理由なんて似たようなものになるのかと、シャクアの誇らしげな顔を見ながらうんうんと頷く。

 装飾などが白い建材で大きさ以外、控えめに造られた神殿はなんとも厳かな気分にさせられる。カーミラに至っては先程から両手を組んで感動しきりである。


 ゆっくり目のスピードでシャクアを先頭に通路を進み、見上げるほどの門の前まで来ると、まるで自分が小人になったかのように思える。

 流石にシャクア王女が居るからか、門を誰何されること無くくぐり抜け目の前には主城まで続く大回廊と言う名の階段は、体力的には問題ないが登るとしたら少し辟易しそうなほどだ。


「ふふふ、安心するが良いわ。上まで続くリフトがあるからそれに乗っていきましょう」


「おぉ、リフトとな」


「えぇ、風車の力で綱を引っ張りそれに繋がった台に乗って上がるの」


「なるほどのぉ…それは便利じゃ」


 なるほど、なんであんな所に風車があるのかと思ったがリフトの動力源だったのか。

 二基あったのでリフトも二台あるはずだが…どうやら一台は既に稼働して上に行っているらしく、大回廊の左側にだけ乗り込む為の籠が残っていた。


「動かしてちょうだい」


 籠に乗り込み柵を閉めると、シャクアの言葉に合わせリフト付きの兵士が独特な音がする笛を鳴らした。

 するとギチチと綱に力が掛かったかのような音が聞こえたかと思えば、籠が斜面にそってゆっくりと上へと登り始めた。

 人が登る速度よりも遅いためか、備え付けてあるベンチに座ってしばしお喋りを楽しむ。


「この後は、どうする予定なのかの?」


「ひとまずは北宮で前と同じ様に…かな。一巡りしたら神殿で名付けの儀式をするけど、その後はまだ私も聞いていないかな」


「ふむ、大して変わらぬのであればありがたいのぉ…」


 暫く他愛ない話で盛り上がり、話が途切れたところでまだ頂上へは着かないので、みな思い思いにくつろぎ始める。

 そんな中、ワシはゆったりとした速度と適度な振動で、ぐっすりと眠る赤子の頬を突きながら、この子はどんな風にここで成長するのかと思いを馳せるのだった…。

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