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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いを新たな場所で
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210手間

 カウンターの上に置かれた、ワシの小さな手のひらでもすっぽり収まる程度の小さな二枚の金属板。

 ワシがマナを注いだからか、淡く薄緑色に光っているようにも見える。

 光っていると言っても蓄光剤よりも儚く弱くだが…。

 もしかしたらワシの様に、マナに対して鋭敏でなければ見えてないかもしれない。


「こちらのタグがギルドに所属しているという身分証になると共に、ギルドが運営する銀行での口座関連の手続きにも利用されますので、決して無くさないように」


「無くした場合はどうなるのじゃ?」


「基本的にランクに対応した罰金を支払い一定ランクの低下の罰則を受けてもらえれば再発行できます。もし何度も紛失したり犯罪へと利用されたりすると、タグの剥奪と再発行の禁止、ギルド銀行口座をすべて差し押さえられます」


「ふむふむ、例えば強盗などにあって盗まれた場合はどうすればよいのじゃ?」


「その場合は紛失した場合と同様に罰金と一定ランクの低下の罰則を受けてもらい、新しいタグへと移行してもらいます。またその際は古いタグを犯罪に使われてないか調べるので、その点についてはご了承ください」


「ふむ、わかったのじゃ」


「では、タグを一枚ギルドで控えとして回収させてもらいます」


「そうじゃ、このタグとやらは穴を開けてもよいのかの?」


 タグは所謂俵型の金属板であるが、穴も何も開いて無いのでこのままだとポケットに入れるなどしか出来ない。

 話を聞いたところ肌身離さず持っておきたいので、できればネックレスのように何か紐などで首から掛けておきたい。


「それでは加工してきますので少々お待ち下さい」


 ハイエルフの受付嬢はそう言って、カウンターの上に置きっぱなしのタグ二枚を持ち、カウンターの奥にある部屋へと入っていった。

 そこで加工するのだろうかと思っていたら意外と直ぐに出てきて、カウンターへと戻ってきた。


「タグの加工にもう暫く掛かりますので、今のうちにタグの説明の続きを」


「うむ、頼むのじゃ」


「では、まずはタグには登録した者の名前とランク、そして登録したギルドのある場所が記載されます。ランクはランクⅠ-(ワン)からⅩ+(テン)までの三十段階あり、またこれとは別に国などから多大な貢献をした等と判断された場合勲章とは別にEX(エクストラ)というのがつきます例えばランクⅨ+(ナイン)のものに付くと、ランクⅨ+EX(ナインエクストラ)となります」


「ふむ、随分と細分化されておるのじゃのぉ」


「ランクⅤ-(ファイブ)までは新人の意欲向上の為に比較的上がりやすいようになっているんです、長期的目標よりも中期、短期の目標を据えたほうが努力しやすいというのが初代ギルドマスターの言葉でした」


「なるほど、たしかにそうかもしれんのぉ、それに細かいほうが実力がわかりやすそうじゃ」


「えぇ、その通りです。もちろん額面通りとはいきませんが」


 ハンターランクの三等級もピンキリで実力に相当の差が開いていた。

 カイルやライラを筆頭に単独でも魔物を倒せるものからパーティでないと覚束ないものまで…。

 それを考えると細かいランクと言うのも悪くは無いだろう。


「さてこのランクですが、我々がクエストと呼んでいる依頼をこなしたり、討伐報酬の受け取り時や魔石の買い取り時に加えられるポイントによって上昇していきます」


「魔石の買い取りでも上がるのかえ?」


「はい、もちろん詐称を防ぐためにタグに残されるマナを元にした討伐記録と、魔石のマナを照会して一致した場合のみです。またタグに残されるマナは大体一月ほどで消滅してしまいますのでそれ以降ですとポイントは付与されません」


「ふむふむ、そのポイントとやらは、どの位貯まったら次のランクになるのかの?」


「それに関しましては、無謀な討伐や依頼を受けないためにも秘密となっております」


「なるほどのぉ…」


 システマチックというかますますゲームチックな感じを受ける、もしかしたら初代ギルドマスターかその関係者が召喚された者かもしれない。


「お次にギルド銀行ですが、基本的に各ギルドに必ずあります素材買取窓口でどの街でもお金の引き出し預け入れが可能となっております、けれども街の規模によっては預け入れのみ行っているギルドもございますのでお気をつけください」


「やっておる所とやっておらん所、見分けるにはどうすればよいのじゃ?」


「ギルド派出所と呼ばれているところは預け入れのみとなっております、また派出所の場合ですとあまりに多額のクエスト報酬や素材の買取、討伐報酬ですと一部もしくは全額お預け入れとなります。この派出所は小さな街だけでなく大きな街、この街にも広場の入り口に派出所がありますのでお気をつけください」


「ほう、つまり買取だけであればわざわざここまで来る必要は無いということかのぉ、それは便利じゃな」


「それと派出所ではギルドへの登録及びタグの再発行手続きは出来ませんので重ねてお気をつけください」


「ふむ、わかったのじゃ」


 なるほど、それで街の入口近くにある派出所ではなくここに案内されたのか…。

 無いとは思うが冒険者になりたい者に、ついうっかり派出所を教えないよう気をつけねば。


「最後になりますが、タグはその人の身分を証明するものであり、その人の証でもあります。道中亡くなった方がタグを持っていた場合出来る限り回収と遺体の処理をお願いします。野ざらしですと魔物の餌になってしまいますので…」


「気をつけておくとするのじゃ。ところで遺体の処理はどうすればよいのじゃろうか、焼けば良いのかの? それに遺体の持ち物はどうすれば良いのじゃ?」


「火葬して埋めてもらうのが一番ですが、森の中や道具がない場合もあると思いますので最悪埋めるだけでかまいません、遺体の持ち物は発見した人のものですので全て回収されてもかまいません。遺族が居た場合は遺族の方とご相談の上で、遺品として幾つかお渡しいただければ結構です」


「それだけ聞ければ十分じゃ」


「そろそろ加工が終わったはずですので取ってきますね」


 再度奥の部屋に言って戻ってきた受付嬢から穴のあいたタグを受け取る。


「このネックレスの鎖はサービスです」


「それはありがたいのぉ」


 穴に鎖が通されたタグを首へとかけると、俵型の薄い金属板と名前も相まってまさにドックタグと言った感じだ。

 ワシの場合はフォックスタグかの、などとどうでも良いことを考えながら懇切丁寧に、但し感情のこもってない淡々とした口調で色々教えてくれた受付嬢に別れを告げる。


「さてさて、まずやるべきは……素材の買取じゃの!」


 誰に言うでもなく呟き、素材買取の列へと並ぶのだった…。

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