21手間
洞窟の一面に苔が生え、その中にマナが自然に結晶化したクリスタル、晶石と呼ばれるものが増えたころ、漸くスライムと遭遇した。
「やっと出てきたか、さっさと蹴散らして先に進むぞ!」
そうアレックスが言うや、アレックスとジョーンズが剣を抜き放ち、『『ブレイズエッジ!』』
インディとサンドラが手を掲げ、『『ファイアアロー!』』と
ワシも技を使おうかと思ったが、無駄に苔をダメにするのも忍びないと、魔石を抉るように抜き出していく。
後ろから見ていたインディが、エグイことする、なんて言ってた気がするが気にしない。
そうこうしてる内に、出てきたスライムは一掃されてしまった。
「う~ん、後ろから見てて思ったんだけど、拠点の所で戦ったスライムよりちょっと大きくなかった?」
一先ず追加が来ないのを確認し、また先に向かって歩き始めると、サンドラがそう聞いてきた。
「そう言われれば、大きかったような気がするのぉ」
「もしかしたら、あいつら元からいたほうじゃないか?」
「元から?それはどういうことじゃアレックス…ここには最近地脈がぶつかったのではないのかえ?」
「あぁ、始めは俺もそう思ってたんだがな、マナ苔だけでは半信半疑だったが、今のでかいスライムを見て確信した。地脈がぶつかってる地点であれば晶石は数か月もありゃ結構でかくなるんだが、マナ苔はそれでも数年はかかる、だからここは元々地脈が近くてマナが豊富だったんだろうな」
「ほうほう、マナ苔を踏み荒らすのがますます気が進まんくなる話じゃのぉ。それでそれで?」
「あぁ、マナ苔は観賞用にも人気だからな、その気持ちは分かるが大丈夫だ、生えるのには時間がかかるが、マナさえ十分にあれば踏まれたくらいじゃすぐに元に戻る。ま…話も戻そう。スライムはマナが豊富で近くに獲物がいない場合は大人しい、そもそも動くのも苦手な奴らだからな。最近、地脈が移動してここにぶつかったせいでスライムが大量発生して、生まれたばかりの弱いスライムが元々居たスライムに追い出されて、外にでちまったんだろうな」
「なるほどのぉ。しかし、スライムは他の死体が無ければ生まれないんじゃないのかえ?」
「確かに…スライムと言うか魔物が勝手に生まれるなんてダンジョン内だけだしな」
「つまり、ここはダンジョンと言う事かえ?」
二人で唸りつつ歩いてると後ろからサンドラが話しかけてきた。
「今、確認されてるダンジョンは炎と水と世界樹だけだし、それは無いんじゃない?あったとしても、周囲で何らかの大規模な異常が発生するはずだし大方、遺物が暴走してるとかじゃない?」
「ほほう、ダンジョンとはその3つだけなのか!教えてくれんかの!あと遺物というのについてもじゃ!」
手を胸の前で握りしめワシより随分と背の高いサンドラに詰め寄ると、んふふ~仕方ないわねぇと、随分と幸せそうに語りだした。
「ここ、カカルニアから南に一月ほど行ったところの砂漠の中に炎のダンジョンが、真逆の北にあるサルスニアっていう街のすぐ北の雪原の中に水のダンジョンが、そしてその名の通り、世界樹の中に世界樹のダンジョンがそれぞれあるのね」
「なるほど、炎のダンジョンの影響で砂漠に、水のダンジョンで雪原に、というところか…しかし、世界樹のダンジョンの影響とは何なのじゃ…?」
「おぉ、かしこい!んっと、世界樹の周りは確かに異常といえば異常なんだけどね、砂漠とか雪原みたいに周りに悪い影響は及ぼしてないのよ。見れるかどうかは分からないけど、見れるのであればぜひ見てほしいわね。私は無理だったけど、一とか二の人の話を聞く限りすんごいらしいからね!」
「おぉ、それは是非ともこの目で見てみんとな。そして遺物とはあれじゃろ、話の流れ的にダンジョンの中で見つかるお宝じゃろ!」
「そう!その通り!ダンジョンの中で見つかる不思議な魔具の事ね、今作られてる魔具より大規模な事をしたり再現不可能な事が出来たりする上に、魔石や晶石だけじゃなくてマナすら動力源に出来るものの総称が遺物なのね、さらに移動させるのが困難なほど巨大な物は遺構って呼ばれてるわ」
「憧れじゃの!はよぅダンジョンに行ってみたいのじゃ!」
「そうよね!憧れよね!女の子で遺物に憧れるの珍しいから、お姉さんうれしいわ!」
「ん…んむ、そう…そうじゃの…」
厳密にいえば純粋な女の子ではないのじゃが…と思うが言ったところで信じられないじゃろうし、何より嬉しそうなので黙っておくことにした。
「そ…そう言えば、遺物と言うのにはどんなものがあるのじゃ?」
実は遺物マニアだったサンドラからこの際、女神さまに頼まれたもののヒントになる事が無いかと色々聞くことにした。
「そうねぇ、見つかってるものだとケガを回復させたりするすっごいのとか…これはハイエルフが色々と危険だからって封印しちゃってるわね。後は人や物を遠くに飛ばすものとか、これはダンジョン近くの領主とハイエルフが管理してて、ダンジョンに設置されてるわ。見つかる数が多くなっているとはいえ、特級の人に特別に貸し出しされてる飛空艇とかはすごいわよ。人が一人だけしか乗れないとはいえ空を飛ぶんだもの」
「おぉ…飛空艇、それは実にロマンじゃ…」
「でしょでしょ!セルカちゃん話わっかるぅ!それでね、さらに見つかる数が多くなってくると、いま私たちが使ってるような一般的な魔具の強化版とか無補給版みたいなものになるの」
「なるほどのぉ、ところで遺物とやらはダンジョンでしか見つからないものなんかの?」
話を振ると待ってましたとばかりに、目を輝かせて話し出した。
「そう、そうなのよそれが謎なのよ!遺物が何でダンジョンだけで見つかるかって話になるんだけど、これはダンジョン自体が一種の遺構で、遺物を作り出すための施設だったものが長い年月の中で暴走して、遺物だけでなく魔物まで生み出すようになってしまったんじゃないかってのが今の主流の学説ね!」
「な…なるほど…のぉ…と言うことは世界樹も遺構ということかの?」
「それよそれ、それが一番の謎なのよ、素敵よね!世界樹自体が遺構じゃないのは、随分昔から言われてることなんだけど、何で遺物が落ちてるんだろーって。そもそも炎と水のダンジョンに比べて行ける人が極端に少ないから、詳しい事は全然良くわかってないのよねぇ」
そこまで一息で話し、ちょっと落ち着いたところでそうそう、と。
「わかってないといえば、噂程度なんだけど世界樹のダンジョンの頂点には世界すら変える遺構があるとかないとか、今まで無かった知識を与えてくれるとか、すんごい強さをくれるとか何とか。実にロマンよね!」
それを聞いて、これが女神さまの言っていた、召喚に関わるものなんじゃなかろうかとピンときた。今までにない知識やすごい力、恐らくこれが召喚された者のことを指しているのでは無かろうか…と。
何年、何百年かかるか分からぬが、絶対に世界樹のダンジョンを踏破してやろうと心に決める。
不死ではないが不老ではあると女神さまにも言われておる。
それに何よりもう朧げな記憶しかないが、元ゲーマーとして世界樹のダンジョン…これほど心躍るものもないじゃろう!
さらりと明かされるセルカの秘密!
女神さまが幾らでも時間かかっても構わないといってたのはこれの為。
女神さまとしてもダメならダメでも問題ないよー異世界楽しんできてねーっていうスタンス。
そういうこともあって別に使命感に燃えてというわけじゃなく
裏ダン攻略してやるぜ!って感じです。
そしてあれですね8月楽しみですね




