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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
女神の願いを邪魔する奴ら
202/3464

195手間

 ワシがダーシュにカルンと夫婦だと打ち明けてから、急に馴れ馴れしくなった。主にカルンに対して。

 先程まで腰を抜かし呼吸困難になるほど怯えていたのに調子の良い奴。


「それでどうなんだ? 子供とかいいぞぉかわいいぉぞ。うちの娘なんて――」


 流石に魔物が出てくるかもと思っているからか離れてはいるが、下手をしたらカルンと今にも肩を組みそうな勢いだ。

 どうやらダーシュも既婚者らしく、さっきから惚気ばかりで一方的に捲し立てるこの話し方まるでドワーフの様だ。

 ドワーフも一気に自分の喋りたいことを喋るので、ドワーフ同士だと同時に喋りだすのでそれで良く喧嘩してる。


「今は訳あって二人旅じゃが子はおるのじゃよ」


「そうか!うちの娘は二歳になったんだが舌っ足らずな声でぱぱーって言ってくれてなぁ…」


「うむうむ。大きくなっても我が子はかわいいものじゃが、その年頃の子は殊更かわいいからのぉ…」


「そうそう!ところでそっちの子供って今何歳なんだ? 二人旅してるってことは結構大きくなってるとは思うんだが」


「よくぞ聞いてくれたのじゃ!双子の娘と息子なのじゃがな十二になったのじゃ!それで今は知り合いのところに預けてハ…んっんっ!将来の為にの仕事のあれこれを教えてもらっておるのじゃ!」


「えっ? 十二? 二人とも幾つ…?」


「ん? ワシらもうすぐ三十じゃ。」


「うっそマジで? カルンは兎も角セルカ…さんも年上?」


 何故かワシにだけ敬称を急に取ってつけたように感じたが…。

 それは兎も角、ダーシュはワシらより年下だったかのか。

 確かに青年と言った見た目だが、隊長と呼ばれてたしそれなりの歳だと思っていた。


「それで幾つなのじゃ?」


「二十五だよ。十二から衛兵やって前の巡りで漸く隊長になれたんだ。お陰で嫁さんに少し楽させてやれるようになった」


「ほう…それは良いことじゃのぉ…」


 うちの領では大体十五過ぎてから衛兵になるものが多いが、確かに宝珠持ちならそれ以前でも十分戦力になったろう。

 それに十二からずっと衛兵なら、この若さで隊長になれるのもうなずける。


「それは兎も角じゃ、ワシらが夫婦というのは内緒で頼むのじゃよ?腹立たしい事じゃが外聞が悪いのでの」


「あぁ、わかった。しっかしまぁ…新しく領をまとめた奴は、何でこんな事言い始めんだろうなぁ…」


「さてのぉ…それが分かれば良いのじゃが、っと無駄話はここまでじゃな」


 魔物が来たであろう通路の先、また新たな扉が見えた。

 近づくと物音がするので人か魔物か何かが居るのであろう、今までの事を考えれば魔物だとは思うが。


「開けるのじゃ」


 試しに軽く押してみたら何の抵抗も無かったので閂などは無いのだろう。

 前よりは軽く、けれどバタンと勢い良く扉を開けると目の前にはこちらに背を向けた魔物が二体。

 地下であった気持ちの悪い一匹目よりも、昨日会った狼男型の魔物に近い。

 そしてその魔物に追い詰められているのか、壁際に立っている何とも胡散臭いフード付きのローブを目深にかぶった人。


『アイスボルト』


「こっちだ化物!」


 魔物に追い詰められてるとは言えこんなところに居るあからさまに怪しい人物だが。

 カルンとダーシュは即座に魔法と剣でもって魔物に攻撃して、謎の人物を救出しにかかった。


「こいつ柔らかいぞ!」


「ですね!」


 カルンの氷柱が深々と突き刺さり、ダーシュの剣が魔物の腕を切り飛ばす。

 不意を突かれた魔物はそのまま為す術も無く、カルンとダーシュに倒された。


「ダーシュ…お主強かったんじゃのぉ…」


「いや、こいつが弱かったというか…」


「えぇ、何というか気配は魔物なのに、強さは魔獣以下と言いますか」


 魔物の気配…なんと言えば良いのか、淀みに淀んだ水や空気を一箇所にまとめたかのようなそんな風な何か。

 だからこそ獣に近い獣人では無く、ひと目で魔物と見抜けたわけだが、そしてこの気配を見抜けるのはどうやら宝珠持ちだけらしい。

 体外のマナを扱うからこそ、そういう気配に敏感なのだろうとワシは考えている。


「そこの…えーっとローブの人…大丈夫か?」


 あっという間に塵になった魔物に襲われてた人物は、よほど恐ろしかったのか俯いてブルブルと震えている。

 そこにさすが衛兵隊長と言うか、実に安心感のある声音で震えてるローブに話しかける。


「俺の…」


「俺の?」


「俺の…俺の作品が魔獣以下だとおおおおお!!!」


 突然顔をあげ叫んだかと思うと、フードの影からでも分かるほど血走った目で地団駄を踏み始めた。

 カルンとダーシュは何を言われたのか分からない様で、ぽかーんと口を開け呆けている。

 一方ワシはゲームやらでよくある展開に、この男が何を言ってここで何をやったのかを理解した。


「あー…あんなものが作品とは程度が低いのぉ…子供が作った藁人形の方がよっぽど芸術的じゃて」


「きっきっきっ貴様ぁあああああああああ」


 ワシに向かって文字通り口角泡を飛ばしながら突っ込んでくる男をダーシュが取り押さえる。

 さすが衛兵隊長、何とも手慣れた動きで相手の動きを封じ、地面に縫い付けている。


「え…っとどういうことだ?」


 しかし、取り押さえた本人はジタバタと暴れる男を尻目に何でこうなったかよく分かってないようだった。


「まさかお主分かっとらんのに取り押さえたのかえ?」


「ん?あ…あぁ、こうなんというか殴り合いの喧嘩で収まらなくなった奴に似てたから」


 殴り合いの喧嘩の時点で止めろよとは思うが…まぁ…確かにドワーフなら殴り合いの喧嘩程度ってなってしまう気がするのが不思議だ。


「セルカさんは何か分かってるみたいですが…こいつは何をしたんです?」


「うむ、どういう手段かは知らぬがの…」


 ワシとしても信じられないし、まさかこんな事をシてるやつが居るとは思わなかったが…。


「こやつはの…魔物を作っておったんじゃ……」

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