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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第四章 女神の願いでダンジョンへ再び
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156手間

 朝食を終えたワシらは宿の部屋に戻ると、テーブルの上へとホラー階層で手に入れた戦利品を、袋をひっくり返したかのように無造作に出現させる。

 どういう理屈かわからないが、あの辺りで収納したなんかアレみたいなアレと言うものすごく頭の悪い認識でもソレが出て来るそれに従って、テーブルに様々な音を立てて転がるソレらは、ひと目見ただけで役に立たねーと思えるような品々ばかりだった。


「うーむ、見事にガラクタばかりのようじゃのぉ…」


「帰って寝ていいか?」


「ま…まだ役に立たないと決まったわけじゃないですし…たぶん…」


 あからさまにがっくりと肩を落とすアレックスやジョーンズ達を、慰めているが慰めきれていないカルンとアイナを尻目に、適当に目についたものから一つずつ手にとって眺めてみる。


「これはなんじゃろうのぉ…」


 成人男性の手のひらであればすっぽりと収まりそうな大きさのペンライト、と言っても石か木かよくわからない材質の棒状の持ち手の先に丸い水晶の様なものがはまった簡単な物。

 どうやらマナを吸収させて使うもののようで、試しにマナを送り込んでみると水晶の部分がピンクに近い赤色に染まった、光量は殆ど言っていいほど無く赤く色付く事そのものが目的の様な感じがする。


「ふーむ、アレックスやちとマナをこれに送ってみんか?」


「火付けの魔具に似てるが…」


「送っておるか?」


「あぁ…うんともすんとも言わねえが壊れてるんじゃないか?」


「ワシが送った時は赤く光ったがのぉ」


 アレックスがジョーンズに、ジョーンズがインディにそしてカルンに渡すが誰にも反応せず、次は僕の番とばかりに目を輝かしているアイナにカルンが渡すと、今度はワシの時とは違ったが水晶部分はしっかりと青く光りを放つ。


「ふーむ…?」


「女性だけに反応するとかでしょうか?」


「はっはっは、魔具の癖に随分と好色だな」


 カルンの言葉に何がツボに入ったのか笑い出すアレックスだったが、色の違いが何かは分からないが恐らくそういうものなのだろう、実にだからどうしたという品だ。

 とは言え何かを判別してそれに反応を返すというのは中々面白い機能なので、何に反応しているかが分かればもしかしたら価値が変わるかもしれないと、売らない捨てないリストに追加し腕輪に仕舞う。

 そして次に目に留まったのは楯…と言っても防具の盾ではなく、トロフィーなどの方の楯だ。飴色の艶に輝く木目が美しい四隅の角には金で豪奢な飾りが付けられた手のひら程の大きさの台座に、まるで毎日磨かれたかのような光沢の銀色に輝くグリフォンの様な意趣が刻み込まれた盾の紋章が入った楯。


「これは遺物のようじゃの…」


 ツンとその表面を突付くとまるで水でも張られていたかのように波紋がそこから広がっていった。


「何かしらの結界が張られているのでしょうか…」


「じゃろうの、魔石で動いているのではなくこれ自身が周囲のマナを吸収しておるようじゃ」


「ほう、結界を張る遺物とかすげーじゃねえか!」


「対象はこれ自身だけのようじゃがの」


「すごくねーな」


 これも審美眼というのだろうか恐らく例のものを見つけた時のためになのか、流石に深い性能までは分からないが魔具かどうかそれがどういう動力で動いてるか位は、何となくぱっと見ただけで分かるようになっている。

 他にも見てみたがその殆どが今現在一般的に普及とは行かないまでも、それなりに出回っている魔具程度のものしか見当たらなかった。


「さて、では最後にこいつじゃの」


「わざわざ最後に回してたってことはこいつは…」


「さての。今までのものとは若干毛色が違うようじゃから残しておったが…」


 こういうものが好きなのか明らかに気落ちしているアレックスとは対象的に、目を輝かせてジョーンズが期待の眼差しをこちらに向けてくる。けれども他のものが至極単純なもののなか、これだけ少し複雑な機構の様に見えただけでその実一番のガラクタの可能性だってある。


 それは子供の頭ほどの大きさもある中に何も入っていないスノーグローブ。いやここまで大きいと台形の台座に乗った占い師の水晶玉と言った方が良いだろうか、シンプルな見た目とは裏腹に今までで一番複雑な中身の様な気がするそれがランタンの光を反射し怪しく光っていた。紫色の幕で部屋を飾りこすったら何か出てきそうなランプで香を炊けば、たちまち怪しい占いの館となること請け合いの一品だ。


「なぁ…どうやって使うんだ?」


「そうじゃのこうやってマナを…」


「いや!俺にやらせてくれ」


 玉の側面を両手で挟み込むようにしてマナを込めようとした瞬間、興奮した声でジョーンズに止められたので確かに毎回ワシが最初にやっているなと思い、向き自体は関係無さそうなのでそのまま使うように促した。


「なにが出るか楽しみだな」


 そう言ってジョーンズがマナを込めると、透明な液体の中へ絵の具を垂らしたかのようにジョーンズの宝珠と同じ色の靄が、玉に触れている手のひらから滲み出るように中で渦巻き始めた。


「お…おぉぉ…」


 その様子に驚いて手を放すものの渦巻く靄は止まらず、しばらくして何かを象るかのようにピタリと止まるのだった。しかし、どうやらそれはジョーンズの方が正面になるようで、横から見ているワシからは薄い線が引いてあるようにしか見えない。


「な…なぁ…なんか文字みたいなのが浮かび上がったんだがこれ女神文字とかか?」


「ふむ?」


 ジョーンズのその言葉に席を立ちジョーンズの横に立ってその文字とやらを覗き込む。


「こっ…これは…」


 書かれていた文字に思わず尻尾の毛が逆立つほど驚愕し、何度も間違いではないかと一字一句丁寧に確かめていく。


「う…うむ、これは女神文字では無いのじゃが…一応…読めるのじゃ…」


「お、そうなのか。じゃあなんて書いてあるか教えてくれないか?」


「ちょっとまっておれ」


 先程は驚愕もあり読めるかどうかを確かめていたので、なにが書かれているかは読んでなかった。そこに書かれていた文字は間違えようはずもない懐かしく、けれども二度と読むことも無いだろうと思ってた、いつぞやかこの世界の言語と置き換えると言われ、見たとしても読めることは二度と無いだろうと思っていた日本語が書かれていた。


「うーむ、どうやらそのものが持っておる技能を書き出しておるようじゃの…」


「おぉ、内容を内容を教えてくれ」


「ふむ、と言っても箇条書きの様に書かれておるだけで詳しい内容は記されておらんようじゃが」


「はやくはやく」


 プレゼントを開けてもいいかとねだる子供のようなその姿に軽く肩を竦ませ、書き記されている事を読み上げる。


「なになに、【斥候】【剣術】【能力球】【乗馬】【御者】【大食い】【冒険者】【独身貴族】…あーうむ…他は文字が崩れておって読めんのぉ…」


「む…まぁ…古いもんだし仕方ないか…しかし能力球ってのはなんだろうな」


「宝珠…の事ではなかろうかのぉ…」


「あぁ…確かになるほどな」


 実のところ崩れてる文字など一文字も無かったのだが、そこは…ジョーンズのぷらーべーと?と言うよりも、かわいそうなので言わなかった。

 その後は当然みんなが使ってワシが読むという流れなのだが、全員に【能力球】という表示があったので確実にこれは宝珠の、これが作られた時代の呼称なのだろう。恐らくコレを作った人は確定で日本人、そしてよくある小説のお話のように自分のステータス表示を出来る機械を開発しようとした途中のものか完成品なのかは分からないがそれの結果がコレなのだろう。


 そんなものが何故あんな所にとか言う疑問よりも、なぜそんなものを表示するという事柄まで表示されてたので、しっかりと表示されるそれとは裏腹に全員の文字が崩れる事と相成ったのだった

本編156話目にして異世界ものの定番ステータス表示君が!

※ただしそんなもん表示すんなよって物まで出しちゃう欠陥品

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