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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第四章 女神の願いでダンジョンへ再び
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147手間

 ダンジョンと町を結ぶ道中は、此方のほうが行き交う人が多いのかマイルストーンがごとくある宿泊用の小屋が数軒経っており、その様はまるでちょっとしたキャンプ場のコテージだ。だいたい一箇所五、六軒ほど建っておりいくらなんでもこれはと思ったのだが、今回は狒々のせいで足止めを食らっていた人達が一気に移動したせいで、何度か他の集団と一緒に泊まる事にもなった。

 その時はアイナが居るので流石に男だけの所に一緒に泊まるわけにもいかないので、必ず女性が混じっているか女性だけの集団の所でご一緒させてもらうことにしていたのだが、アレックスら三人が話に行くと露骨に嫌そうな顔をするのに、カルンやアイナだとむしろ是非にと来るのは傍から見ていて中々面白いものがあった。カルンに対しては多分に色目が含まれているのでその点は全くもって面白くないが、キツネの姿で威嚇したところでカワイイだけなのでどうしようもない。


「ね?彼女とか居るの?」


「はい、妻が居ます」


「あら、そうなんだ残念」


 とまぁこんな感じで、ストレートに聞いてきてあっさりと引くのだけはありがたいのだが、ハンターという職業柄さっさと言ってさっさと引いてさっさと次を探したほうが良いのだろう。女性だけの集団の場合、あっ!抜け駆けすんなという顔からほっとしてからの心底残念そうな顔、男性が混じってる場合、またかとかなんであいつにとか言う顔からざまぁみたいな顔になったりと、毎回実に面白いものが見れた。もちろんカルンが他の女性に靡くことなぞありえないという絶対の自信あってこそだが。


 カルンへのナンパが失敗すると今度はアレックス達に…行くことなど無くカルンのそばにいるワシへと標的が移る。もふもふの毛皮に覆われた真っ白いキツネとその背中に張り付くこれまた真っ白なオコジョ、そしてその隣に居る最近子犬特有のぶわっと広がった毛が鳴りを潜め始め、撫で付けられたかのような毛になり始めたのだが、まだまだ可愛らしい容姿のフェンの三匹が居るのだ。これが女性たちのハートを射止めないならば、一体何が射止めれるのだろうか。


「ね、ね、ね。この子達触ってもいいかな?」


「えっと…」


 その言葉にスズリは慌てて、ワシの背中に張り付いていても隠れられていないということに気付いているのか、カルンの外套のフード部分へと一目散に隠れてしまうが、ワシの方は大丈夫なのでコクリ頷いておく。一緒に泊まるかもしれない人なのだ、変なところで意地を張っていたって良いことなぞ一つもない。


「えぇ、どうぞ大丈夫ですよ」


「きゃー、やったー」


 スズリもやっとカルンだけにはやっとこさ慣れてきたので、見ず知らずの人も平気になるのはワシが自由自在に大人の女性へと変われるのと、どちらが早いのかという位になりそうだ。そんな事をぼんやり考えつつ撫でくり回されている間、お互いパーティのカルンを除く男連中は食事の用意や暖炉の火の番などに駆り出される、女性とカワイイものとイケメンはどんな所だろうと強いのだと思うと、何となくアレックスらの背中に哀愁を感じるのだった。


「しかし、止みませんね」


「まぁ、ここらへんは結構こんなもんよ」


 小屋が密集して建っている本来の理由…それは吹雪だ。この辺りは特に天気が不安定らしくよく吹雪くそうだ。なので連泊することも珍しくなく、場合によってはそこで人々が詰まったりするので必然的に小屋が多くなる。しかしこれほど頻繁に吹雪くとなると最初にここに小屋を立てた人はよほど大変な思いをしたのだろうと、カルンの膝の上で丸まったていたり日がな一日のんびりし欠伸などをする度に黄色い声が上がるのは微妙に居心地が悪いのだが、吹雪の中動くことも出来ず娯楽も無いのでまぁ仕方ないことだろう。


 吹雪が止むとそれ急げと挨拶もそこそこにお互い別々の方向に進んだりする。ダンジョンからの帰りだったりまた別のハンターを待っているからとそのまま残ったり、そんな事を繰り返し結局七日ほどかかってダンジョンがある町へとたどり着いた。

 雪の合間から除く町は随分と立派な防壁に囲まれていると思っていたのだが、近づくにつれそれが思い違いということに気付く、それは防壁などではなく例えるなら灰色の小さなエアーズロックと言ったところだろうか。刻一刻とはっきりと見え始めるその威容に最初は町はまだ先かと落胆したものだが、よく見ると道はしっかりとその岩山へと伸びている、道の先をさらによく見てみれば決して小さくはない洞窟がぽっかりと覗きどうやらそこへと道が伸びているようだった。


 ついに洞窟の入り口までたどり着けば、ここが町の入り口だとばかりにいつもの様に衛兵が検問を行っていた。どうやら岩山の中にある町らしい。今まで行った中で一番ファンタジーな町に心踊らされるが洞窟の中の町、雪など積もっているわけがない。この馬車は橇なので雪がないとと思っていたのだが、衛兵曰く町の入り口直ぐ側の厩まで雪を入れているらしく皆一様にそこで馬車を預かってもらう事になっているようだった。

 

 無事懸念も無くなり、早く早くと急かすようにカルンに頭を擦り付ける。ゆっくりと馬車が進む中、岩山の中にある町と言うものをあれこれ想像しダンジョン以上に心躍らせるのだった。

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