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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第一章 女神の願いを叶えよう?
15/3456

15手間

ウジュルウジュルと、粘着質なものが這いずり回る音が聞こえる。

聞いてるだけで寒気が背筋に昇ってくるような、そんな音を必死になって聞き取る。

何処からくる、何匹いるのじゃ…。


その時、まるで指揮者でもいるかのように薄気味悪い音が止まる。

べちゃりと目の前に真っ黒な何かが落ちてくる。


「なん…じゃ…」


「スライムだ! 物理はきかねぇぞ!『ブレイズエッジ』」


アレックスは叫び、剣に炎を纏わせる。


「光ってるところが核だ、そこを狙え」


見た目は巨大な生卵の中身。ただしコールタールやヘドロの様な、という形容詞がつくが。

卵なら黄身がある場所、黒い粘液のそこだけが薄緑に光っている。

そして、その頂点にはよく見るとオリーブ色の宝珠がついている。


「こやつら宝珠がある、魔物じゃ!」


「はぁ?宝珠持ちのスライムがなんでここに」


後から聞いた話によれば、魔獣のスライム自体は魔獣同士で争った跡によく現れる。

物理が効き辛く多少厄介だが、魔具や魔法が使えれば問題はない。

追い払うだけであれば、魔術の火種や松明の炎を近付けるだけでいいので、一般人にも対処できる程度の魔物らしい。

しかし、魔物のスライムは完全に物理攻撃が効かず、魔具や魔法しか対抗手段が無い。


「ここんとこの巡りじゃ戦争なんて無かったし、氾濫の話も聞いてない。

 まずいな。動きは鈍いが、顔の高さくらいまでは飛び上がるから、その辺り気を付けろ」


「狼に比べれば蛆の如くじゃの、物理が効かぬなら物理のレベルを上げて殴ればいいのじゃ!」


魔手にマナを注ぎ込み、光ってる核をスライムの横合いから、掬い上げるように爪を入れる。

ゾブリと何の抵抗も無くスライムを貫くと、核を握りしめスライムから引きはがす。

途端、手に纏わりつくスライムの肉は粘性を失い、泥水のように崩れ落ち、地面に零れ落ちる前に塵となり消えていく。


「思った通り、ワシの前では物理無効なぞ紙同然じゃな! 核の魔石を引きはがせば、即死なのも他と変わらぬのぉ」


地面を這いずるものを薙ぎ払いつつ、飛びついてくるものは貫手でもって核を引き抜く。

木々から落ちてくるものは払い落とす。

スライム相手に魔手は、まさに効果は抜群。面白いように魔石を残し塵となる。

数分ほどでスライムは全滅し十数の魔石となる。転がった魔石も数えつつ腕輪に回収していく。


「ひい、ふう、みいと…んむ、なかなかの収穫じゃったな」


「魔法使いが居ないと殲滅は、結構手間つうか、無理なんだがなぁ……」


そうぼやきながら、アレックスも魔石を数個回収する。


「肉がある魔獣には獣の爪程度じゃが、マナの塊である魔物にとってワシは、天敵のようじゃのぉ」


「ケガもなしで楽に倒せて良かったが、さっさと引き上げてギルドに報告しよう」


「ん? もう引き上げるのかえ? 日が暮れるまでには、まだ時間があろう?」


「これが魔獣であれば、それはそれで報告する必要はあるが、狩りを終えてからで良いか、となるんだが……。こいつらが魔物ってのが問題でなぁ、一匹だけでも即その場で切り上げて即帰還、即報告もんだ」


「ふむ、魔物となったスライムは、それほど厄介な奴なのかえ?」


「いや、スライム自体は鈍いし雑魚だ、だがその発生条件が問題でな」


そう話しながらも警戒はしつつ、足早に森の外へと脱出し、街道に出て少し休憩がてら先ほどのスライムの事と合わせて話を聞く。


曰く魔獣のスライムは魔獣や普通の獣などが、争った後の残されたクズ石や死体に穢れが溜まったりして生まれたものだが弱く、すぐほかの魔獣や魔物の餌になる。

もしスライムの群れが居たり、大きい個体がいた場合は、近くで大規模な魔獣同士の争いがあったか

ハンターが魔獣の群れを倒したものの、クズ石を砕く前に止むを得ず離れたか、砕く前に死んだかのどちらかであり、前者ならギルドに場所と規模を報告するのが義務らしい、後者はそもそも報告できないが。


そして、魔物のスライムは魔物同士の争いか、大規模な戦争、その跡に生まれやすい。

クズ石を核としたスライムは、いくら巨大化しても魔獣のままであり。

魔物となるには、魔石を核として生まれるか、人間の死体が必要となる。


そのため魔物のスライムが居るということは、近くで魔物が大量発生、通称氾濫が起きたか。

戦争などで人間が一度に大量に死んだか、どちらかが起こったということなので

即座に報告に戻る必要があるという事らしい。

そこまで話すと、彼はやおら立ち上がり。


「さて、休憩もしたしさっさと戻ってギルドに報告だな。その後は、とりあえず宿をギルドに伝えてから、何日か待機になるだろうな」


「出来れば厄介ごとは遠慮しておきたいんじゃがのぉ」


「諦めろ。ハンターなら厄介ごとは飯のタネだ、どうせ調査の指名依頼がくるだろうしな。それまでせいぜいのんびりするさ」


街に戻り、ギルドに場所、規模、周りの様子などを報告し、同時に証拠として

スライムの魔石を買い取りついでに提出する。

森へ行く前に取っておいた宿屋へ向かい、桶を借りて体を拭き、今日買ったばかりの寝間着に着替える。


「こっちに来て二日でこれか…色々詰め込みすぎじゃろう……。ダンジョンに潜れるまで3年もあるのじゃし、もっと手加減してくれても、よいのじゃないのかのぉ」


ベッドに寝転がりつつそう呟くが、それなりに疲れてたのか即座に寝息を立て始めた。

厄介ごとは異世界の華!

次回スライムの待つ洞窟へ!

スライム触手で絡めとられ、白くべたつくなにか、な展開に!



はなりません。




でも、洞窟には行くかも魔物の巣で洞窟は基本だよね。

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