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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第四章 女神の願いでダンジョンへ再び
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137手間

 翌朝、ワシは人の姿にいつの間にか戻りワシを抱きまくらにして寝たいというカルンの願いに一も二も無く頷いたのでその腕の中で目覚めたのは当然と言えよう。

 イルダの話しによれば二、三日はと言っていたがワシはマナの吸収に特化していると言っても過言ではない魔物の天敵たる所以でもある、なのでほぼ空っぽになったマナも一晩でこの通り人の姿に戻れるというわけだ。

 無論キツネの姿から元に戻ったので全裸なのだが、幸い毛布がかかっており更にはこの部屋は煙突の排熱で常に暖かさが保たれているので、全裸で過ごしても少し肌寒い程度で全く問題はない。

 とは言えこの部屋でヒューマンが全裸で過ごすなら、激しい運動でもしない限り寒さで凍えてしまうだろう、なんとも獣人の体とは頑強なものだ、もっとも口さがない者がもし言うのであれば…鈍いだけとも言えるが。


 それでも寒いものは寒い、二度寝するにしろ起きるにしろ着替えなければと身動ぎしてはたと思い出す、今はカルンに抱きつかれていると言う事実を。

 キツネ姿の時は緩かった拘束がたとえ同じ程度で抱きつかれていても人の大きさになれば途端窮屈となる、つまり今は結構きつく抱きつかれている。

 無論、ワシの膂力であれば例え男相手でも…しかも寝ているとなれば尚さら振りほどく事なぞ文字通り朝飯前、しかし抱きついているのはカルンだ…ワシにそんな事は出来ない。

 今日…いや数日は何もすることが無いので急いで起きる必要もない、サンドラの住んでいる家自体はすぐに見つかった。


 昨日、ワシが寝ている間にきたルースがその旨を告げていったと、じゃれているときにカルンから聞いたのだがどうやら件の旦那と共に出かけているようであった。

 しかも、隣の領へと…けれどそれが数ヶ月前の話なのでそろそろ戻ってくる時期とのことだった、聞けばその旦那は中々の商人で、あと数代もすれば貴族も夢では無いだろうと言うほどの勢いがあるそうだ。

 ルースがそういったのであれば、それは本当に凄く本当の事なのだろう、まったくこちらの貴族になれなかった連中に爪の垢でも持って帰りたい所だ。

 という事で帰ってくれば衛兵が伝えに来てくれるらしいという事も教えてもらった、なので日がな一日宿でゴロゴロしてても問題はない。


「うむ、しかしこれは…」


 男子三日会わざれば刮目して見よ、などと言うが意味自体は違うのだが…それでもそう表現したくなるほどこの時期の男子の成長速度は著しい身長や体格などがだ。

 初めて会った時は女の子の様だと思った顔立ちも今や立派な美丈夫だ、腕や胸などにもしっかり筋肉が付きそれに抱きしめられてドキドキしない女性が居るか?いやいまい…居たらぶん殴る。

 そんな美丈夫の瞼がほんのりと開き、起きだそうとしているのが間近で感じ取れる。


 けど待って欲しい、そんな健全に育った青少年の目の前に裸の美女を抱きしめて、しかも何をしても受け入れてしまうときた、更に極めつけは時間を気にする必要が無いときたら後は実にわかりやすい。

 ワシらがそんな自堕落な生活を数日送っている中、シニュとルースはこの領の貴族なので私用とは言え態々ここまで来たので仕事などをやっていて会えなかったのもあり昼食を取る時以外は殆ど宿の中に引きこもりっきりだった。

 さすがにルースにこんな状態でお金を出させるわけにもいかないので、この宿の支払いをワシらがするように変更してもらった、もちろんと言って良いものかは何なのだがルースは当初渋ったが心にも無い事だが貴族の面子と言えばなるほどと納得して引き下がってくれた。


 勿論ワシだってこの数日を無為に送っているわけではない、毎日しっかりとお母様から言い付けられた使命をしっかりと果たしている。

 とは言えこの数日の有り余る時間を利用して、カルンにも協力してもらい使命を行っているが結果は今のところ芳しくない、すぐに結果がわかるようなシロモノでも無いので既に完了している可能性も無くはないが…。

 そんな折、朝食を持ってきた宿の人からサンドラが戻ったという報告をされたと伝えられた、すぐにでも行きたい所だが流石に今日行くのはサンドラと言えど疲れているから避けておく。


「では、明日行くとしようかの、商人ということじゃからすぐにでも別の場所に行くかもしれんが、それでも数日は滞在するじゃろうから大丈夫じゃろう…」


「そうですね…では、先に明日行くと伝えておいてもらいましょうか?」


「うむ、そうじゃの。突然行って驚かせたいところじゃが大店のようじゃしそうもいかんじゃろうからな」


「では、私共が伝えておきましょうか?」


 取り敢えず教えてもらった場所にいって店のものにでもなんでも言付けを頼んでもらってなどと考えてる所に宿の人がそう提案をしてきた。


「では頼めるかの?そうじゃついでにこの先の広場にある宿に泊まっておるアレックスらにも明日ここに来いと伝えておいてはくれんかの?」


「かしこまりました」


 サンドラの住んでいる場所を伝えに来てくれた人なので、そちらの場所は大丈夫。もちろん一緒に行くのでアレックス達にも言付けを頼む、さすが高級宿はこういうサービスが良い。

 自分たちがやることを宿の人が代わりにしてくれるということは、とどのつまり暇になるということ。暇になった時間を利用し買い物にでもと思い窓を開けると風こそ出てないが大雪で悪いことをしてしまったかと思うが、すでに頼んでしまったものはしょうが無い、こんな雪の中でかけるのも気が進まないので申し訳ない気持ちに蓋をすべく窓を閉め、ここ数日と同様使命を完遂すべくカルンの協力を仰ぐのだった。


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