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女神の願いを"片手ま"で  作者: 小原さわやか
第一章 女神の願いを叶えよう?
14/3459

14手間

宿を取り、街の東西南北にある門のうち西門に向かう途中、アレックスが門について必要なことを教えてくれる。


「さてと、三の狩場なら南の門の先が妥当だが、今回は日が落ちるまでに帰れる距離にある

 西の森に行く。陽が落ちちまうと門が閉まるからな。さっさと印を貰っちまおう」


「印とな?」


「あぁ、ハンターが街から出る際の規則だ、魔具の一つでな。詰所でカードに印をつけてもらうと、詰所にある対応した宝珠になんか出るそうだ。ま、詳しくは知らんがな。それで、カードの持ち主が出先で死ぬとするだろ、すると対応した宝珠が砕けて持ち主が死んだと判るってやつだな。ただ分かるのは、生きてるか死んでるか位で、場所はわからん。しかも、カードを無くしても宝珠が砕けるから。そこまで信頼できるモノでも無いな。んで、宝珠が砕けてからしばらく、カード紛失なんかの申し出がない奴が居た場合。こいつ死んでるぞっていう、そいつの特徴なんかが書かれたのが詰所に張り出される。別に間抜けを晒してる訳じゃなく、腕輪とカードをあとできたら遺品を、可能であれば回収してきてくれって事だな。あと、よくある訳じゃないが、同じ方に出たやつらが短期間で死んだらそっちにやばい奴がいるってのも判る」


話してるうちに門に着き、印を付けてもらい西の森を目指し歩きつつ話の続きを聞く。

ちなみに印をつける魔具は巨大な切符切りみたいなものでカードを挟むだけだった。


「ところでワシの腕輪は個人の持ち物なんじゃが死んだ場合はどうなるのかえ?」


「死んだ奴の持ち物は、見つけたやつが腕輪とカード以外は貰っちまっていい。ただしお金と素材、魔石以外は、そいつの遺族が要求したら引き渡さなきゃいけない。要らなかったらギルドに引き渡せばいい、その遺品も一巡りしたら完全にギルドのもんだ。ま、死ななきゃいいだけだ、今回は幸いにも、張り出されてる奴は誰もいないから気楽にいこう」


「そうじゃの、ワシも約束を果たさぬうちに、そうそう死ぬつもりもないがの」


「約束?誰か人に会うとかか? 知ってる範囲でいいなら力になるぜ?」


ふむ…まぁそれがどういったものか以外は話してしまってもよかろうの。

失伝してるとの話じゃし判るわけもなかろうしの。


「物じゃの、もしかしたら物ですらないかもしれぬが、とりあえず見たらわかるはずじゃ。どこぞのダンジョンにあるらしいが、場所も何もわからんでのぉ。幸い何時まで見つけろとは決められておらぬし、最悪見つからなくても良いとは言われておる」


「ダンジョンっつーとあと三巡りは手も足も出ないわけか。確かに五から三に上がるには、だいたい三巡りくらいかかるやつが多いから、普通は気にすることでもないんだが、飛び級しちまったわけか。三巡りの間に色々鍛えれるし、無駄に待つわけでもないか? ……にしても12のガキに押し付けるこったねぇだろう、確かに強いがよぉ」


最後は小声で呟いておったがワシの耳にはバッチリ聞こえておったがの。

女神さまがこの世界の神とは限らんが不敬じゃぞとは言わんでおこうかの。

一人顎に手を添えうむうむと頷いてるとアレックスが声を上げる。


「おっとおしゃべりはここまでだ来たぞ」


アレックスが睨む方向を見やれば狼型の魔獣が三匹こちらに走ってきていた。

こういう魔獣を見つける術も学んでいかぬとなと思いを新たにナイフを抜き左手に構える。


「さてと、腹ごなしといくかのぉ」


言うや三角に並んでる狼の先頭にめがけて走り出す

後ろの二匹がこちらを囲もうと左右に開くが構わず先頭の狼に走る。

もう少しでナイフが届くといったところで狼が首めがけて飛び上がってきたところを

少し右にずれて躱し走る勢いそのままに開いた口からマナを通した逆手に持ったナイフで切り裂く。

くるっと後ろを振り向きつつ勢いを殺すとちょうどどす黒い血をまき散らしつつ地に落ちる狼の陰から

二匹の狼が飛びついてくるがそれを前宙で交わしつつ一匹の胴体を切り付ける。


「さすがに浅いか」


一撃では無理じゃったが魔獣も出血で動きが鈍ればいいんじゃが

そう思い見ればふらふらとよろけてるのであれは放っておいてよかろう。

残った一匹が果敢にもまた飛び込んでくるので、


「おぬしにはこれをくれてやろう、存分に喰らうがよい」


そう叫び魔手を思いきり振りぬくと体の前半分を失った狼が宙を舞う。

残った一匹の首を魔手で削り取りさてクズ石を砕かねばと周りを見れば、

最初のはすでに溶けたのか跡形も無く2匹目も地面に溶け消えようとしているところだった。

最後の一匹だけまだ形が残っていたので探すのは面倒だと魔手ですべて消し飛ばす。


他におらんかとさらに周りを見渡しアレックスを見れば頷いてるので

魔手を戻しナイフの血を拭い鞘に戻す。


「さすがに苦戦はしないだろうとは思ってたがまさか瞬殺とはな。

 ナイフの切れ味も一級品だが右手の威力はやばいな。

 このペースなら日暮れ前まででも十分稼げそうだな」


「狼は森の中で何度も戦こうたからの、直線的で御しやすいしの」


「そういや東の森の街道近くで会ったがあの森から出てきてたのか…。

 とにかく西の森も東の森と大差ない魔獣が出てくるから問題はないな」


魔獣は素材も魔石も落とさず討伐報酬も二束三文なのでできる限り避けつつ、

森に近づきまだまだ日も高いので少し長く森を廻ろうということで、

森の奥に向かい四半刻ほど歩いたが魔物どころか魔獣一匹出てこない。


「西の森はずいぶんと奥まで行かぬと魔獣もでないんじゃな」


「少ないどころか居ないのはおかしいなぁ、狩りが集中したら減ることはあるが。これだけ歩いて全く遭遇しないのは異常だ、運よく出会ってないってのならいいが…」


そうアレックスが呟いたとたんそのセリフを待ってましたとばかりに、

周りの木々や草むらからウジュルウジュルと気味の悪い音が響いてきた。

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